マンガよもんが2019年11月号~2020年4月号掲載作品。単行本は2020年7月13日ぶんか社刊。kindle版は2020年5月15日刊……とAmazonには記載されているが、電子書籍の方が先に発行されるってあり得る? それとも間違い?
美人でスタイルもよく仕事もできる女性が、いわゆる女子力が非常に低い、という設定はすっかり定番になっていて珍しくない。初めてこの設定を持ち込んだ漫画は何なんだろう。女性なら家事ができるのが当たり前、という社会的な共通認識があり、そうではないことに意外性があったのだが、とっくの昔に花嫁修業などという言葉は死語になり、女の子は成績はともかく、料理や掃除ができないと結婚できませんよ、といって厳しく躾けている家などほとんどいないのではないか。
だから本来は意外ではないはずなのだが、令和の世でも依然として少なくない男性が、家事仕事を女性に期待し、つまり、自分はやらないできないでもよいとし、それを容認する女性もまた少なからずいるのだろう。だからこのような作品はまだまだできるだろう。
本作は、料理の苦手な主人公が、料理をせざるを得ない状況に陥り、スマホでレシピサイトを検索して簡単そうな料理を作ろうとするが、うまくいかずに悩むというパターンの作品である。なぜすみれ先生が料理上手を期待されるのか、なぜ本人はそれに応えようとするのかの問題はさて措き。
料理ができないできないと言っているが、これまで人から料理を教わったことがなく、何の訓練・練習もしたことがないのであるから、できないのは当たり前である。そこを卑屈になる必要はないが、レシピサイトを見たらできると考えることに対しては、料理を嘗めるなと申し上げたい。これは主人公だけでなく、主人公に共感する人に対しても。
主人公はピアノの先生だが、これまでピアノを弾いたことのない人が、YouTubeでピアノの弾き方を見たら、その日から「エリーゼのために」が弾けますか? 弾けるわけないでしょうとあなたが答えるなら、料理も同じですと言うしかない。
料理というのは、プロの料理人になろうというのでなければ、特別の才能がなくてもソコソコできるものである。だからといって経験のない人が初めて作っていきなりできるほど甘いものでもない。包丁の使い方、鍋の使い方、野菜の切り方、ひとつひとつに基本があるし、修得するには時間もかかる。そのことを虚心に認めるべきだ。
全4巻で完結したようなので、最後まで読むつもりで買ったのだが、この一冊でいいや……