鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

名探偵の高校時代「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」

単行本(新書版)は2013年5月刊。文庫本は2016年3月20日刊。連作短編集。「赤信号」「夏休み」「彼女の朝」「握られた手」「夢に向かって」「災い転じて」「優佳と、わたしの未来」所収。

「扉は閉ざされたまま」で世に出た名探偵・碓氷優佳の高校時代を描いたもの。すべて「日常の謎」であり、殺人事件を解決したりはしない。

本作は、率直にいえばあまり感心しなかった。その主な理由は、登場人物(女子高生たち)の生態にリアリティが感じられないことだ。軽口をたたき合ったり、プロレスごっこをしたり、そうした行為ひとつひとつが「一所懸命高校生ぽいことをさせてみました」風に見えてしまう。私立パラの丸高校がリアルかといえばリアルではないのだが、リアリティはあるのだ。

最終話で明かされる、優佳が付き合っている大学生グループ(男4人、女は優佳を含めて3人)というのは「アル中分科会」の面々、すなわち「扉は閉ざされたまま」の登場人物のことだろう。「坊ちゃん」(おっとりした優しい人、いいとこのお坊ちゃん)が安東章吾、「切れ者」(頭は冷静で心は熱い人)が伏見亮介、「スナフキン」(旅好き、公務員志望)が新山和宏、「丁稚」(愛されキャラ)が石丸孝平、ということか。

優佳はこの中に好きな人がいたが振られた、と仲間に告白するシーンだが、高校時代に振られたんだっけ。「扉は閉ざされたまま」では優佳は25歳だから、振られたと言いつつもその後10年近くずっと思い続けていたわけか……。