鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

仲間由紀恵の顔がちらつく「顔 FACE」

以前見たドラマの原作。ドラマを見たときは原作を読んでみようとは思わなかったのだが、ふと書店で見かけて目が吸い付いてしまったため、購入することに。

小説は連作短編の全5話であり、ドラマは11話だから、ドラマ版ではかなり話を膨らましたことになる。読んでみると、西島耕輔(オダギリジョー)や樋口京子(余貴美子)は、ついでに捜査一課の面々もドラマオリジナルのキャラクターだった。名作だと思った「死刑囚の証言」もドラマオリジナルのストーリー。

といいつつも、原作はうまく生かされているなあとも思う。テーマは女性警察官である平野瑞穂の苦悩で、その部分は変えていない。もっとも、ドラマでは西島という吐き出す相手がいるが、原作では(たまに七尾が愚痴を聞いてくれるだけで)溜め込むしかない点は決定的に違うが。逆に、ドラマ化するに当たっての最大の改変は相手役を作ったこと。まあ、これは当たり前の改変だが。やはりお年頃の男女の丁丁発止がないと。

もうひとつ、原作ではタイトルの意味が今ひとつわからない。最初に小説を読めば不思議には思わなかったかも知れないが、ドラマを知ってしまうと物足りなく感じる。ドラマでは、似顔絵画家である平野が、西島と自分の顔が見えない、と言っていたのが、二人の心の傷が少しずつ塞がっていくのにつれて「顔が見えるようになる」、自分の顔を取り戻す、という点が大きなテーマになっていた。そのため少々平野の解説的お説教が鼻につきはしたけれど、これはいい改変だったと思う。

平野は、横山秀夫の他の作品にも登場するそうである。機会があれば読んでみたい。

顔 FACE (徳間文庫)

顔 FACE (徳間文庫)

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