- ドイル、駒月雅子訳「緋色の研究 新訳版」(角川文庫)
この本を読み始めるまでには紆余曲折あった。
先日、子供向けのホームズものを読んで、普通に訳されたものをちゃんと読んでみたいという欲がわいたが、はて、だれが訳したものにしようか。昔懐かしの延原訳(新潮文庫)に魅力を感じるが、長編はともかく短編集の編集が原著通りではないので食指が動かない。小林司・東山あかねは嫌いだから河井出文庫版は買いたくないが、解説が一番詳しいので興味はある。創元推理文庫、光文社文庫、角川文庫、いずれも新訳を出している。大久保康雄版、阿部知二版もいまだに入手できるようである。悩むところだが、ここは深町眞理子がいいだろうと判断し、創元推理文庫版で「緋色の研究」と「四人の署名」を購入した。
ところが「緋色の研究」がダウンロードできない。Amazonのサポートに連絡していろいろ調べたが原因はわからず、「返金するので紙で買ってください」と言われてしまった。紙の本を買えと言われてもそれは厭だから、仕方なく本作のみ角川文庫版を購入した次第である。このサポートとのやりとりにも少々不愉快な思いがあったのだが、ここでは省略。こんなことがなければ駒月雅子訳に出会うことはなかったと、前向きに考える。訳注が最小限で、かつ、本文中に入れ込まれているため読みやすい。
内容については改めて論じることはないが、ホームズ。ワトスンともにベーカー街の部屋で食事を取るシーンは何度もあるものの、ハドスン夫人が登場しないのは意外だった(単に「女中」としか出て来ない)。
(2019/12/1 記)