鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「老人と海」

2014年9月5日刊。

本作は高校生の時に福田恆存訳で読んだことがある。その時は正直退屈な話だと思い、短い話なのに読み通すのに何日もかかった。マグロを仕留めるところ、サメと格闘するところ、そして何日もかけて手に入れたマグロがきれいっさっぱりなくなってしまうところ……は印象に残ったが、少年の存在など全く頭に残っていなかった。

今回読んでみて印象に残ったのは、何日も漂流することになった間に、サンチャゴが少年のことを何度も思い出すシーンである。なぜ少年のことばかり考えたのか? 孤独だったから、不安だったから、寂しかったから、少年以外に親しい存在がいなかったから……。いろいろ考えられる。

サンチャゴは日々漁に出て、今回のように予定外のことが起きても耐え得るだけの技量と精神を持っている、その点では老け込む年ではないかも知れないが、84日も不漁が続いたのは、単に運河悪かっただけとは言えない。40日不漁が続いた後、少年の両親が、老人に付くのをやめるよう言うのはその表われだろう。世代交代が近いことを暗示しているのではないか。

少年が10歳か22歳か、という議論があることを、「ラジオ英会話」4月号のテキストを読んで知ったのだが(だから読み返す気になったのだが)、なるほど興味深い議論である。訳者は10歳のつもりだ訳したようだが、自分は、22歳の青年と考えた方がしっくりいくような気がする。10歳では、自分に懐いているだけの、将来が楽しみではあるが、現時点ではただの子どもである。が、22歳なら立派な若き漁師だ。老人が一緒にビールを酌み交わすに足る存在であり、あとを託す相手になる。

22歳と解して訳した本を読んでみたいが、福田訳も高見訳もサンプルを読む限り、10歳で訳しているようだ。



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