鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「少年少女世界の文学 名探偵ホームズ」

  • ドイル、梶竜雄訳「名探偵ホームズ」(少年少女世界の文学)

あしながおじさん」があまり面白くなかったため、次は確実に面白いと思える作品を読もうと思い、ホームズものにしてみた。ホームズものは、もちろんよーーーーく知っており、どんな風に訳されているのかな、という興味があった。

収録作は「盗まれた秘密設計図」「焼け跡の死体」「ふしぎな遺言」「ぶな屋敷の秘密」「盗まれた試験問題」の五編である。話自体は当たり前だが面白い。だが、この五編の選び方と収録順にはいろいろ疑問を感じる。

一冊に複数の話を収録したいとなると、長編というわけにはいかないから、「緋色の研究」を持って来れないのはわかる。しかし、第一話には、ホームズとは誰で、ワトソンは何をやっている人、という説明を持って来なければ話が始まらないだろう。原作にはなくても、そのような説明を第一話の冒頭ですべきだ。ホームズが何者なのかは読み進めばかろうじてわかるとしても、ワトソンが何をしているのか、これではさっぱりわからない。しかもよりによって「盗まれた秘密設計図」はマイクロフトの初登場の話である。シャーロックの説明がないのにマイクロフトの説明があるのは妙である。

「焼け跡の死体」では、冒頭で、ワトソンは一時ホームズと別居して医者を開業したが、その病院を売って、またホームズの部屋に戻ってきた、とある(ここまで、ワトソンが医者だとは一切触れられていない)。その上、病院を高値で買い取ったのは実はホームズだったという。確かにシャーロキアンの間でそのような説も出てはいるが、訳文で断定することかどうか。しかも、ここまでホームズとワトソンの友情についてほとんど触れられていないにも関わらず、いきなりこんな話が出てくるので戸惑う。

ちゃんと「ホームズ物語」を読み返してみたくなった。


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(2019/11/28 記)