鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「スクールバック」1

  • 小野寺こころ「スクールバック」1(サンデーうぇぶり)

2023年7月12日刊。「大人なのに」「死ぬかもしれない」「青春フィルター」「天才だからしかたない」の四編を収録。

また素晴らしい作品に出会った。カテゴライズするなら癒し系に入るのだろう。最近読んだ漫画だと「珈琲いかがでしょう」と同傾向といえるが、似ているわけではない。舞台が高校で、青春学園ドラマの一面もある。

第一話、愛菜は自分なりに考えて行動しているのに教師が理解してくれない、説明をしようとしても「言い訳するな」と話を聞いてくれない、電車の中で痴漢に遭い、怖い思いをしたのに、母親は「どこに触られたの?」などとずけずけ訊いてくるし父親は「示談金が入ったラッキー」などとデリカシーのないことを平気で口にする。

いい加減いっぱいいっぱいになっていたところを、学校の用務員の伏見直から「疲れてる?」と声をかけられて、思わず涙をボロボロこぼしながら心情を吐露してしまう。

伏見は、話を聞いても「わかるよ~」などとは言わない、同情もしないし励ましもしない、ただ話を聞いて、コーヒーをくれただけ。でも愛菜は、大人にもこういう人がいるんだと少しだけ考えが変わり、伏見の好きな珈琲を好きになるのだった。

いいねえ~。話は聞いてくれるけど、余計なことは何も言わないところがいい。以降の話も同様で、伏見は別に誰かの問題を解決してあげるわけではない(「天才だからしかたない」は少し主体的に動くかな)。ただ、生徒は「自分の気持ちに寄り添ってくれる」という気持ちを持つ。それが大事だ。

扉と目次のデザインが素敵。