1968年9月1日単行本刊。文庫本は1997年6月1日刊。
矢野健太郎がなぜアインシュタインの伝記を書いたかと言えば、そもそも矢野はアインシュタインの相対性理論を理解したくて数学を学び、いつかアインシュタインと議論をしたくて数学者になったような人物だから。最終章の「アインシュタインと私」は、矢野がいかにアインシュタインを敬愛していたかがにじみ出ており、胸を打たれる。
矢野は優れた研究業績を残す傍ら、パワフルに執筆活動を行ない、膨大な入門書、参考書、エッセイなどを著わしているが、それにしてもこのような書物は下調べだけでも相当な手間暇がかかろう。従って、一人ですべてを行なったわけではなく、いわばアシスタントのような人が何人かいて、その人たちがさまざまに協力したに違いないだろうとは思う。それにしても偉業だ。
ひたすら称賛するのみで、批判的なことは書かれていない。伝記としてそれはどうかという人もいるようだが、矢野健太郎に批判的なことが書けるわけがないではないか。これは矢野健の愛の物語なのだ。