- 賀十つばさ「バニラな毎日」(幻冬舎)
単行本は2021年6月30日刊。文庫本は2023年4月6日刊。kindleで購入した経緯は「だからだよ、書店さん」(2025-02-23)に詳述。
白井が店を締めざるを得なくなり、佐渡谷真奈美という変な料理研究家と知り合い、ケーキ教室に付き合わされて、佐渡谷の過去を聞いて、ヴィクトーが今でも佐渡谷のことを想い続けていることに気付いて、……紆余曲折を経てお店を再開するまで。白井は店を閉めている短い間にいろいろなことを経験し、いろいろな人と会い、変わっていくところが魅力的だ。
ドラマではよくわからなかったことが詳しく説明されていて、ようやく納得が行った箇所がある。たとえば店を潰した後いったん「パスカル」で働き始めるが、経歴がバレてクビになるシーンがある。なんで経歴がバレてクビになるのか、そもそもなんで経歴をごまかしたのか不思議だったが、「パスカル」は「パティスリー・ブランシュ」の競合店だった。店のノウハウを盗んで再起の際の参考にさせられたら困る、というわけ。ついでに「パスカル」はチェーン店で白井にクビを言い渡した人は雇われ店長。本社からそのように指示されたら逆らえないのだ。
ドラマとは設定が変更されていた点は枚挙に暇がない。順子は東大出であることを鼻にかけたり、「高いお金を払っているんです!」と怒鳴ったりしない。結杏は身障者ではないし、結杏の母は何でも代わりにやってあげちゃう人ではない。優美は不在中に母が亡くなり精神状態を悪化させたのは原作通りだが、自分が母を殺したとは言っていない。不在だったのはボランティアでカラオケではない。なにより、物語の舞台は都心で大阪ではない。
結杏は、ドラマを見た時は身障者の役だからといって身障者を起用するのはいかがなものかと思ったが、そうではなく、和合由依を起用することになったから、それに合わせて設定を変えたのかも知れない。それならば納得だ。しかし、それ以外については変更の理由がよくわからない。全体的に話が大げさになっている。
原作は、日常+アルファの出来事が淡々と起き、それを経験しながら白井が少しずつ変わっていくのがミソ。何事も大げさに騒ぐのは佐渡谷だけ。ドラマは一回ごと・一週ごとに盛り上げないといけないから、話を少しずつ盛っているのか。それにしては東京から大阪へ舞台を変えた理由がわからない……と思ったら、ドラマはNHK大阪局の制作だった。だから? だったら、主人公も含めてみんなに大阪弁をしゃべらせてくれ!
ドラマを見てから小説を読むと、いくらキャクターの設定が違うといっても、セリフが蓮佛美沙子、永作博美、土居志央梨、木戸大聖、伊藤修子、和合由依、……の顔と声で頭の中に再生されてしまう。それがいいことなのか、悪いことなのかはわからない。
作者は、Amazonで調べた限りでは4冊の小説を上梓している。本職は脚本家のようだ。