鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「魔法使いユウヒ」1

2023年8月4日刊。

ユウヒは子どもの頃から魔法使いに憧れていた。ある日、魔法宇宙のセセリと知り合う。ユウヒの宇宙と魔法宇宙は隣り合った双子の宇宙で、ぶつかったはずみで人や物が入れ替わることがあるという。ユウヒの自転車とセセリの魔法の箒が入れ替わったことをきっかけに二人の付き合いが始まる。セセリから様々な魔法を教わったユウヒは……?

「殺人ウサギガール」とは全くタイプの違う話。絵柄は似ているし、ファンタジーという点は共通するか。が、寡黙な主人公に対し本作はおしゃべりでいささか軽薄。中学生? 高校生? こちら側の世界も、現在の日本とは少し違う。

セセリから教わる魔法のほとんどは、現世の人間の感覚ではたいへんに危険なもので、一歩間違えると大事故につながる可能性があるのに、セセリの注意を聞き流し安易に使用するところにはいただけない。最終話「降霊術」では、そのために自分を殺さなければならなかった。まあ、生き返らせる魔法を使うのだけど。

1巻ということは2巻もあるのかな。



漫画・コ

「レンタル義理子」1(新刊)

2023年12月23日刊。

義理子は「恋人代行」のアルバイトをしている。が、口は悪く性格も悪く、あまり人気がない。そんな中、何度も指名をしてくれるお得意さんがいる。死んだ妻に似ているのだそうだ。そんな彼を義理子はうざいと思っているのだが、ある日、彼が別の女性を一緒にいるところを目撃してしまう……

仕事仲間から指名客のことを聞かれ、「あいつは妻の幻覚を見ているだけで、私といたくて指名しているわけじゃない」と呟くあたり、義理子の方が彼を気になり始めたのか、と思われる。自分を指名し、優しく振舞ってお金も出してくれるが、自分を見ていないことに苛立っている感じもある。

しかし、ここで終わりますか! こんな気になるところで!



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「人飼いエルフの秘め事」(新刊)

2023年12月4日刊。初出は2022年11月27日、コミティアで。

森のエルフ、ノエリィはひょんなきっかけで人間(男子)を拾い、飼うことになった。が、生き物を飼うのは初めてなので、戸惑うことが多い。で、どうもこの人間は自分に欲情しているようだ……。

本作も性描写があるゆえかアダルトに指定されているが、別段過激でもなんでもないし、厳し過ぎる気もするが、性行為そのものがテーマだから致し方ないところか。でも、異種恋愛ものとしてかわいいし、エルフが、このままではストレスをためてしまうのではないか? どうしてあげるのがいいのか? と悩み、少しずつ距離を縮めていくくだりは、なかなかのヒューマンドラマである。「気遣い」が感じられるという点で、性教育のお手本にもなり得るから、中高生にも推奨したいくらいだ。



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「ワンショットアンダーパピー」

2023年9月29日刊。一時期広告によく出ていた作品。それに惹かれて購入。ちょろい。

ゆなはもてる自覚があって、実際人気もあって、余裕をもって男子をあしらっているつもりだったのが、一目惚れした相手が自分を好きになってくれず、プライドが傷つけられる……というのはわかる気がする。惚れた方が立場が弱くなっちゃうよね、と考えると、なかなか可愛い恋愛ドラマである。

一方、ゆなは目の前でちやほやされたり、かしずかれたりすることに快感を感じ、それを得るために自分を安売りしていて、そのリスクに周囲の友人は気付いているが本人は気付いていない。もてない人間のやっかみだと思っている。現代のインフルエンサーが陥りそうなことで、「意味がわかると怖い話」でもある。

しかしAmazonではアダルトに分類されていて、ここで紹介のリンクも貼れない。まあ、二人の「行為」をかなりていねいに描いているから、致し方ない面はある。



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「もう一度、してみたい。」

2023年9月13日刊。一時期広告によく出ていた作品。それに惹かれて購入。ちょろい。

猿島と結奈は犬猿の仲。企画会議では揉めてばかり。ある日、会議で言い足りなかった二人は居酒屋へ行ってずっと言い争い、終電を逃し、気が付いたらホテルで、ひとつのベッドで、ともに裸で寝ていた。慌てて服を着、なかったことにしようと了解し合い、会社へ向かうが、二人とも、とても気持ち良かったことは覚えていた……

意見がいつも分かれても、延々と議論できるのは同じ土俵に乗っているから。おまけに議論のためとはいえ二人で居酒屋へ行かれるのだから、基本的に仲は良いのだ。お互いに自覚がなく、いがみ合ってばかりと思っていても、ひとたびスイッチが入ると、べったり深い関係に、というのは案外あるのではないかと思う。

そうした恋愛の機微をうまくとらえた作品、と思うが、アダルトに分類されていて、ここで紹介のリンクも貼れない。まあ、二人の「行為」をていねいに描き過ぎているから、致し方ない面はある。自分はこの程度では特にエロいとは思わないが、年齢のせいもあろうか。



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「カラクリショウジョ」(全2巻)

  • うさみみき「カラクリショウジョ」1, 2(eBookJapan Plus)

1巻は2016年12月23日刊、2巻は2017年6月28日刊。

1巻の冒頭を読んで震えた。なんという斬新な幕開け。なんという恐ろしさ。

茜は父と二人、田舎暮らし。が、小作料が払えず、都会へ出稼ぎに。小さい部屋を借り、父は工場へ働きに行く。ある日、茜の許へ父の遣いだという工場の人が現われ、彼女を連れ出す。うまいことを言って茜の同意を得た形にし、彼女を眠らせ、目覚めた時茜は機械人間に改造されていた……。

SFサスペンスにまた新しい地平が開いた。

その後彼女は工場の人間を殺して脱出、父を助けようとするが父は行方不明、世間には茜が人を殺して逃亡中とニュースが流れ、捕まえようとした警官との戦いで瀕死の重傷を負い……

で、2巻でどのように収束するのかわくわくしながら読んだのだが、収束するどころか、壮大な幕開けとなったところで完。続きはネットで公開しているらしいが、単行本としてはここで終わりらしい。なぜ!?



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「殺人ウサギガール」

  • ナガサワヒロ「殺人ウサギガールvs○○○(バーサス・マルマルマル)」Vol.1, 2(ナンバーナイン

Vol.1は2023年8月4日刊、36ページ。Vol.2は2023年10月20日刊、553ページ。比較的最近の本。

ウサギガールは高い戦闘力を持ち、無表情で人間を殺す。刀を持つ騎士も、手榴弾を使用した攻撃も、大規模討伐隊も、ウサギガールを殺すことはできず、一人を除いて全員が殺された。黒騎士の少年だけは、ウサギガールにかすり傷を与えることすらできないが、その肉体は神の祝福を受けており、やられても死なない。

ついに最後の戦いとなった。黒騎士の少年がウサギガールに挑む。大きな傷を負い、地下聖堂に逃げる。黒騎士を追ってウサギガールも地下聖堂に入る。実はこれはウサギガールを追い込む作戦だった。地下聖堂は強力な結界が施されていて、中からは決して開けられないのだ。つまり、少年も一緒に閉じ込められたことになる。かくて社会には平和が訪れた。

1600年後、学者が住民の反対を押し切って地下聖堂を発掘。扉を開いた瞬間にウサギガールが出てきて発掘隊は全滅。その後一ヵ月で国は滅んだ……

というのがVol.1の話。書くと長いが、戦闘シーンはほぼ描かれず、結果のみが示され、話のテンポは異常に早い。

Vol.2はVol.1の続きではなく、「最後の戦い」から学者が発掘に来るまで。Vol.1よりもていねいに、またVol.1では描かれなかったエピソードを描く。ウサギガールがかわいい。

なんとなく、元ネタがあるんだろうなと思っていたら、映画「モンティー・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」にインスパイアされたと書いてあった。モンティパイソンを知らないから、言われてもわからないけど。



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