鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「食べる女」

2018年8月29日刊。新潮文庫所収の「食べる女」に「続・食べる女」の一部を加え再編集したもの。24編の短編集。

「おいしいものを食べているときと、いとしいセックスをしているとき、女は一番幸せになれる」とキャッチにある通り、女性の性と食に力点を置いて描いたもの。最大欲求は食欲・性欲・睡眠欲だといわれるが、そのうちの二つについて描いたということは、つまり「生活」について描いたということ。

主人公の年齢は総じて高い。20代特有の、激しい、燃え上がるような恋ではなく、「このままこの相手と結婚するか、それとも今から別の結婚相手を探すか」という切羽詰まった恋愛でもない、もっと静かな、大人の恋物語が描かれるのも今の自分には心地よい。

上質のストーリーだが、ひとつだけ難をつけると、タイトルのセンスが悪い。「食べる女」は食事と男に掛けているのだろうが、貪欲さを感じさせ、内容と一致しない。が、それはまだいいとして、各短編のタイトルが「台所の暗がりで」「セックスとラーメンの方向性」「マイ・ファーストワイン」……どれも読んでみようという気が起きない(読んだけど)。たいとるはもう少し頑張っていただくか、どなたかセンスある方の協力をお願いした方がいいのではないでしょうか。

なお、巻末の「解説」を壇蜜が書いているが、これが全話の中で最も面白いのも皮肉だ。



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