「週刊モーニング」2016年1月28日号~2017年6月1日号掲載作品。全7巻はそれなりの長さだが、雑誌の連載期間は一年半にも満たない。
モーニング連載中に夢中になり、単行本も購入して何度も読み返した。今回改めて読み返したが、依然として面白い。
歴史上の人物を主人公にした作品は多々あるが、昭和の政治家を漫画にするのは(少なくとも、社会派作品ではなくエンタメとしては)異色だ。政治家の評価は毀誉褒貶かまびすしく、絶対的なヒーローにしにくい。その上、直系の親族が今も多く政治家だったりするから、あまり変な改変もしにくい。まあ、描きにくいのではないか。
主人公の池田勇人は総理大臣にもなった人物だが、失言が多く、不信任決議が可決されたこともある。脇を固める吉田茂、佐藤栄作、田中角栄も、一物も二物もある人物だと思うが、本作では全員がさわやかなくらいの憂国の士であり、裏表のない善人に描かれている。善人過ぎて脇が甘く、つけ込まれることもあるほど。こういう描き方もあるのかとびっくりした。
敗戦後の混乱の中、日本を復興させ、独立国としての地位を勝ち取らねばならず、戦争では負けても外交では勝とうと吉田以下、一丸となって臨むさまは、一種のスポコンものである。ちょうどいい具合にGHQという敵(かたき)もいる。そこを熱血漫画風に描いているため、いくらなんでもカッコよく描き過ぎだぁ~と思いつつも、感情移入してしまう。
男性キャラと違い、女性は萌え風というかアニメ風というか、全く描き方が違う。そのギャップがまたいい。
しかし最終回は意味深である。池田勇人を描いているのに総理大臣にはならない。それどころか吉田内閣が総辞職し、池田のほかに佐藤、田中らが冷や飯を食うシーンで終わりなのである。終盤でチェ・ゲバラやジョン・F・ケネディなど新しいキャラが登場するが、登場しただけで終わる。どん底の中で希望に目を向けるところで終わるというのもひとつのあり方かも知れないが、「打ち切り」だったのかとも思う。まあ、全7巻というのはよい長さではある。全23巻とかだと、ちょっと買って読んでみようかとは思えないから。