鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

無類の本好きだった児玉さん

児玉さんが亡くなられてから書店に並ぶようになった(ようなきがする)。こんな著作もあったのかと購入。

児玉さんがたいへんな読書家であったのは有名な話で、翻訳を待ちきれず原書で読む、というエピソードも良く知られている。確かに本書を読むと、つい本屋さんを覗いてしまう、欲しい本があると我慢できない(お金がなくても買ってしまう)、一度入手した本は捨てられない、など、自分とそっくりであり、頷くことしきり。おそらく本好きには共通することではないか。

一方、採り上げられる本と採り上げ方はかなり意外だった。

一般に、読書家が本を紹介する時、読者層や商売を考慮して現代作家を中心にするとしても、ある程度古典も混ぜるものだ。また、現代作家の新作を取り上げるとしても、こういう部分が素晴らしい、と書くことはあっても、この本は何万部売れました、年間何位でした、みたいなことはあまり触れないものだ。

しかし児玉さんは、この作家がいかに人気があるか、この本がいかに売れたか、という話から入る。「今アメリカで最も人気のある女流作家」「発売と同時に1位を記録し、年間でも3位」などのように。まるで、売れているから読みたくなる、売れているから面白い(はずだ)と言わんばかりである。読書好きは、「自分の好みは世間の人気には左右されない」と思われたがる人が少なくないのではないかと思うのだが、堂々と述べているあたり、却って潔いともいえる。

が、「児玉さんって、案外俗っぽいんだなあ」と感じたのが正直なところ。もちろん、児玉さんを軽蔑するわけではなく、より親近感が涌いた次第。

寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)

寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)

(2011/12/09)