鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

KISS1号に「のだめ☆小冊子」が付録でつくとは!

コミックスの「のだめカンタービレ」は、本編23巻のあと、番外編としてオペラ編上下2巻が追加され、現在までのところは全25巻完結となっている。「現在まで」と断わったのは、個人的に、今後追加されてほしいと切実に希望するからだが、オフィシャルにはこれで完結したことになっているようだ。*1

この番外編は本当に素晴らしい出来だ。のだめ本編は、随所にギャグが散りばめられており、基本的には楽しく読める話ではあるが、底を貫くものは結構重たく、大きなテーマである。特にのだめが迷走をはじめ、千秋がのだめを見失うあたりは、いくらその後好転することがわかっていても、読むのがつらい場面だ。ターニャは、恋愛面ではうまくいきそうに見えるが、音楽家の卵としては、コンクールに落ちたまま、将来が定まっていない。ユンロンは夢破れて故国へ帰る。「お前ら成功したら連絡しろヨ! 中国に呼んでやるから」「お前は中国の元首か!」などと明るく突っ込まれてはいるものの、彼の心情を考えるとやり切れないものがある。

番外編は、こうした苦悩がすっぽり抜けて、ギャグだけが残る。おまけに舞台は日本であり、なつかしいR☆Sオケのメンバーとも再会できる。同窓会気分で本当に楽しく読めるのだ。のだめはロンドン響との再演を果たして世界のNODAMEとなり、真一くんともラブラブでしあわせ一杯。完全に恋人として「できあがった」二人を眺めているのは、長年の追いかけっこを見てきた者としてはたいへん楽しい。音楽面でのだめにすっかり抜かされてしまった千秋としては、これから苦難の道が待ち受けているわけだが、彼の場合は努力でそれを乗り越えていくだろうと思われ、あまり深刻にならずに見ていられる。

黒木君はコンクールで入選を果たし、ドイツのプロオケに入団。音楽家としての一歩を踏み出す。しかもターニャとは完全にデキており、二人で日本に彼女披露の凱旋(?)帰国を果たすまでに。R☆Sオケでは清良と高橋くんがコンマスコンミス争いを繰り広げるが、考えてみれば、この二人はともに国際コンクールで3位入賞を果たし、ソロ活動も行なっている新人とはいえれっきとしたプロ。この二人がアマオケでトップ争いをしているのだから、R☆Sオケのレベルはどれだけ凄いんだという話である。

チームのまとめ役としてはともかく、バイオリンの腕前は今一歩だった峰龍太郎は、舞台の演出としてその才能が開花し始める。菊池は相変わらず女に手が早く、木村沙悟浄もモテ期を迎える。カタイラさんも(美人の奥さんともども)再登場。

ただし、後半に入るとやはり話は少し重たくなる。まず杏奈の苦悩が物語を覆う。これは本編では出てこなかった新しいタイプの苦悩である(本編では主要登場人物のほとんどが学生であるため、プロの音楽家になるための壁が苦悩の中心になる。杏奈の場合はプロデビューしたがその後泣かず飛ばずという悩み)。結構深刻な話だ。どうして深刻なのかというと、杏奈にとってどうすればいいのかわからないことがひとつ、また、プロを目指している人&既にプロとして歩き始めた人にとっても、決して他人ごとではないからだ。

また、千秋にとって初挑戦のオペラは予想外に難しく、なかなかうまく回らない。しかも今回は、ちょっとやそっとの努力で乗り越えられるものではなさそうで、千秋自身も深く悩み始める。そうした点から、後半になるとギャグが減る。減ってないのかも知れないけど、前半のような爆発力のあるギャグは姿を消す。また、千秋&ブー子の切れのいいボケ&突っ込みも、テンションが落ちる。この漫画の宿命で、致し方ないのだろうが、ちょっと残念だ。

とはいえ、のだめ&千秋は、カップルとしては確固たる絆が結ばれており、もう追いかけっこはしない(今回の追いかけっこはプロポーズをする・しないのレベル)。また、のだめ自身は音楽で悩まない。すっかり自信をつけた様子だ。それが救いだ。

救いといえば、単行本に描き下ろしの「ターニャカンタービレ」は傑作だ。最後を締めくくるにふさわしい佳作。

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ようやくnyaさんが感想を書いてくれました。

なんと、12月25日発売のKISS1号に「のだめ☆小冊子」が付録でつくとな。知らなかった! さっそく買わねば!

Kiss (キス) 2011年 1/10号 [雑誌]

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  • 発売日: 2010/12/25
  • メディア: 雑誌

(別ブログより転載)

*1:しかしその後KISSに付録がついたりしているので、なんだかんだで今後も番外編が追加される可能性はある。