鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

時間をかけずに語学を身につけることはできない

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

著者は、母国語はハンガリー語だが、露、英、仏、独、ハンガリーの五ヶ国語は同じレベルで身につけており、通訳として、どの組み合わせでも一方の言語から他の言語へ自由に移ることができる。一方、イタリア語、スペイン語、日本語、中国語、ポーランド語に関しては、通訳の仕事をする場合半日の準備作業が必要とのこと。つまり、半日の準備をすれば通訳の仕事が勤まる程度に習得しているということだ。さらに六ヶ国語については翻訳を行なうだけ、らしいが、翻訳が勤まる程度には習得しているというわけ。普通、これを称して十六ヶ国語を身につけているという。

そういう人だから、語学の習得に関してさぞ独特のノウハウ、それも、世間一般でいわれている方法よりもはるかに短い時間で(あるいは、あまり苦労しないで)身につけるノウハウを持っているのではないかと思ってしまうのは人情というもの。そう期待する人が世界中にいるからこそ、このような本ができたわけだろう。

しかし作者は、語学を身につけるのに特別な才能は何も必要ないという。誰でもできる、ただ毎日一時間半、勉強を続けさえすれば……。一日一時間半の時間を捻出することのできない人は、作者の提案する方法では語学を習得することはできないだろう。そして恐らく他のいかなる方法でも習得はできないだろう、という。

ごもっともでござんす。時間をかけずに(安易に)身につけるなんて、不可能だということだ。結局、そういうことなのだ。誰に訊いても同じなのだ。
(2014/12/13 記)