- 宍戸周夫「コンピュータ技術者になるには」(ぺりかん社)
タイトルに惹かれて、つい購入。
何人かの著名人のインタビューと、著者による解説とでできている。解説ページの方が長く、インタビューの方はどちらかというとアクセントとして入っている印象だ。
しかし、インタビューは面白かった(特にまつもとひろゆきさんのインタビューは一読の価値あり)ものの、肝心の解説については疑問を感じる点が多々ある。
純粋に技術的な説明ということであれば、間違ってはいないのかも知れないが、題名からすれば、一種の就職ガイドであろう。であれば、業界事情についての説明は避けて通れないはずだが、なぜか、巧妙に避けられている。
まず、ハードウエア技術者とソフトウエア技術者を一緒くたに語るのが無茶。ハードウエア技術といっても、たとえばマイクロチップの開発をする場合、半導体そのものの開発もあるが、チップの中にもプログラムはあって、そのプログラミングをしなければならず、その点ではソフトウエア技術者とやることは同じである。けれども、会社員としては、ハードウエア会社に就職するのとソフトウエア会社に就職するのでは天と地の違いがある。
また、ソフトウエア開発の場合も、受託開発の場合と自社開発の場合と大きく二分され、自社開発の場合は売れなければ儲からないリスクを抱える代わりに、売れれば大きな利益が出る夢がある。一方受託開発の場合は、とにかく受注ありきなので売上げは確実に上がる一方、儲けることはできない。
さらに受託も技術系と事務系に分けることができて、一般に事務系のソフトウエアは作成にさほど高い技術は要求されないため、単価は安く押さえられる傾向にある。恐らく20代の前半だと、平均的には世の中の標準よりは高い給与がもらえるけれど、何年勤めても収入は増えない。そうなると、ある年齢を超えると生活ができなくなるわけで、「プログラマ35歳定年説」もこうした背景があって出てきたものである。歳を取ると新しい技術についていかれなくなる、などというのは後付で言われたことであり、実際それが間違っているのは、現在はこうした「プログラマ定年説」は大きな声で言われることがなくなったことでわかる。
僕の知っている世界は限られるし、最近の動向はわからないから、そういうことがわかればと期待したのだが、その意味では残念ながら期待外れだった。
- 作者: 宍戸周夫
- 出版社/メーカー: ぺりかん社
- 発売日: 2010/11
- メディア: 単行本
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