鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「誰も書かなかった 清須会議の謎」

発行は2013年9月なので、映画の公開前だが、三谷氏の小説がソコソコ評判になり、映画化の話も進んでいるところから企画が立てられたのだろう。小和田氏は監修になっていて、実際に執筆した人の名がないが、文章自体、お世辞にもうまいとは言えない。

それはともかく、映画や小説ではなく史実としての清須会議(およびその前後の歴史的状況)がどうだったかをきちんと押さえておくことは、映画や小説を楽しむ上でも大切である。タイトルにもあるように、清須会議そのものを前面に出した解説書は他にないようだ。

しかし、正直なところ、僕は清須会議に関してかねがね疑問に感じていることがあったのだが、本書を読んでもそれは解決しなかった。

会議の重要な目的はふたつあり、ひとつは後継者選び、もうひとつは土地の配分である(映画では前者のみ描かれたが)。いなくなった織田信長、信忠、明智光秀の遺領を遺族や有力家臣の間でどのように配分するかは重要だ。特に信長の遺領は500万石以上もあって、誰がどこを貰い受けるかで力関係が大きく変わるのだから。

僕の疑問は、信長や信忠の遺領を、なぜ家臣が持って行ってしまうのかということだ。跡継ぎは三法師と決まったのだから、三法師が全部受け継ぐのが筋なのではないか? そのための後継者選びだったのではないか?

明智光秀の遺領はわかる。わかるけど、これは直接戦って戦功のあった羽柴秀吉丹羽長秀織田信孝が分け合えばいいことだ。柴田勝家らには関係ない話である。戦闘に参加していないのだから。

しかし実際には、信長、信忠の遺領は一部は信雄、信孝にも配分されるが、大部分は有力家臣が持って行ってしまう。当時の主従関係と土地の支配関係に基づくものと思うが、むしろこうした「当時の社会システム」「背後にある考え方」をとりあげてくれると良かったのに、とは思う。

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