鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「穴殺人」6

  • 裸村「穴殺人」6

粗筋(ネタバレあり)

黒須越郎は二年半の懲役に処される。出所後、幸運にも清掃会社に採用され、そこでの仕事に没頭する。やがて、職場の同僚である桐山杏奈に好かれ、つきまとわれる。さらに自分を殺してほしいなどと言われ、ついに黒須は桐山を殺すことを決意。が、宮市以外の人間を殺すのは宮市への裏切りであると考え、断念。そして自死をはかるが、これも失敗に終わり、病院へ運ばれる。その病院で黒須は宮市と再会する……

実は宮市莉央は死んでいなかった。が、二年間、昏睡状態が続き、ようやく目覚めた時は事件のショックで一切の記憶を失ってしまった。そして、延命寺玲奈の息のかかった病院で延命寺の妹として治療を受けていた。黒須は宮市に会いに行き、宮市は(思い出せないが)友達になりましょうと答える……

雑感

ここまでの展開は見事としか言いようがないが、本巻はさすがにちょっと無理をしたなというのが率直な感想だ。

宮市莉央が生きていたとは思わなかった。状況的に、とても生きていられるとは思えないが、それは認めたとして、そのことを黒須が知らなかったのは、いくらなんでも無理がある。宮市が死ななかったからこそ二年半で済んだのにそんなことも知らなかったのか、と延命寺に馬鹿にされるが、宮市が死んだとしたら致命傷を与えたのはシュナイダーだろう。正直、黒須が執行猶予もつかず二年半も服役しなければいけないほどの罪を犯したとは思えない。

一方、宮市が一切の罪に問われないのは不思議だ。もともとシュナイダーに撃たれたのは黒須を殺そうとしたからだ。また、ほかにも余罪は山ほどあり、真面目に捜査をすれば、いくつかについては証拠をつかむことができただろう。それとも、宮市が殺人鬼だというのはシュナイダーの妄想で、それゆえ罪のない宮市を現職警官が撃ってしまったことでシュナイダーはお払い箱となり、その妄言が警察で聞き入れられることはなかった、ということか。まさか記憶喪失になったため罪に問えないということで不起訴になったか。

宮市の身分はすぐにわかるはずだ。そうなれば両親に連絡が行き、籍は入れてなかったとしても、黒須が夫であることはわかるだろう。延命寺がどのような「工作」をしたのかはわからないが、延命寺は裏社会とはいろいろつながっていそうだが、警察を操作できるほどの権力があるとは思えない。宮市が天涯孤独の身であると周りが思い込んでいるのも不自然である。そもそも莫大な治療費がかかったはずだが、親でなければそれは誰が負担したのか?

この手の作品で、あまり細かい揚げ足を取るつもりはないが、今回は敢えて指摘した。

ともあれ、宮市さんは生きていて、そのことを黒須が知った。宮市は黒須を思い出さないが、深い関係にあったことは理解した。さて、これからどう話は進むか。



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