鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「アカギ」27~36

  • 福本伸行「アカギ」27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36(フクモトプロ)

「ワシズ」を読んで無性に「アカギ」が読み返したくなり、1巻から再読。途中で、全巻買っていなかったことを思い出した。ワシズ編に入ってからも最初は面白かったのだが、どんどん間延びし、いつまで経っても終わらないから、飽き飽きして、買うのをやめてしまったのだ。読み返しても実際その通りではあったが、途中まで読めば続きを読みたくなるし、ラストがどうなったかも知りたいから、残りを一気に購入。

間延びの展開はいただけないが、いよいよ最終話が近くなってからはまた面白さが増してきたし、結末は納得。改めてすごい作品だ、と思った。

ワシズ編はいったいどのように決着をつけるつもりなのか、永年の疑問であった。途中で辞めることはできない。負ければ死だし、勝てば5億(現在の50億に相当)からの金を手にすることになる。安岡、仰木らの取り分もあるから5億すべてとはいわないが、少なくとも半分は手にできよう。しかし読者はその後のアカギを知っているわけで、生き延びたのは明らかだが、といって、大金を持っている様子はない。死ぬ時はわずかながら借金もあったという。赤木は賭け麻雀に勝ち大金を手にすると、パーッと散財する癖があるようだが、数億(現在の数十億)はなかなか使い切ろうたって使い切れる額ではない。

で、まさかあんな結末になるとはね。そのやり方が、いかにもアカギらしいと思えるところがすごい。「天」の作品中では悪徳不動産絡みで赤木が天と対決するシーンがある。その時の決着の付け方と似ている。アカギは自分で決めたことには忠実なのだ。結局、アカギは生き残った、鷲巣も死なずに済んだ。その上、鷲巣から好かれ、付きまとわれ、それをウザがって避ける日々なんて、なかなか痛快ではないか。

終盤、鷲巣が瀕死になり、臨死体験をする場面がある。地獄に堕ち、地獄の鬼と対決し閻魔に逆らうのだが、その破天荒な行為とそれを支える異常なまでの体力は、まさに「ワシズ」を彷彿させる。「若い頃の体力が蘇ってきた」と言って思い浮かべるのは、「ワシズ」で鉄球をぐるぐる回して空を飛ぶシーンだったりする。執筆時期が「ワシズ」のあとだから、ということもあろうが、「ワシズ」が正典に組み込まれている感じで面白いやり方だと思った。

とはいえ、これは単行本で一気読みするからそう思っていられるが、雑誌連載を読んでいた読者からすれば、本編なのにスピンオフのような展開を延々と読まされたら、さぞ腹が立っただろう。