鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ワシズ -閻魔の闘牌-」(全8巻)

  • 原恵一郎「ワシズ -閻魔の闘牌-」1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8(フクモトプロ)

ワシズ 閻魔の闘牌 1

ワシズ 閻魔の闘牌 1

Amazon
ワシズ 閻魔の闘牌 2

ワシズ 閻魔の闘牌 2

Amazon

近代麻雀オリジナル」(竹書房)2008年7月号~2012年11月号掲載。紙の本は近代麻雀コミックスとして刊行。kindle版はフクモトプロ。今の今まで知らなかったが、手許にある福本伸行の本は全部フクモトプロの刊行になっている。フクモトプロのサイトが見つからないため正体が不明だが、さいとう・たかをにとってのリイド社みたいな存在なのだろうか?

福本伸行の「アカギ」に登場する鷲巣巌を主人公にしたスピンオフ作品。福本漫画のスピンオフには「トネガワ」「ハンチョウ」「イチジョウ」のように、本人が描いたとしか思えないほどそっくりな絵柄のものが目立つが、本作は全く似ていない。そもそもスピンオフ作品の中では最も古いようだ。

原恵一郎という作家は知らなかったが、それなりに作品数も多い。絵柄は土山しげるにそっくりである。土山のアシスタント出身なのかなと思うが、これも不明。

このような作品があったことを全く知らず、つい数日前に見つけて読み始めたところ、ぐんぐん引き込まれ、後半は一気に読んでしまった。

戦後、鷲巣はGHQ相手の高レート麻雀で勝ちまくって荒稼ぎし、それを元手に経営コンサルタント「共生」を設立、やがて日本のフィクサーになっていくまでを描いた作品。とはいえ、歴史・経済物語ではなく博打漫画なので、どのように会社を設立しどのように人を集め、育てたか、などということは一切描かれず、全編ほぼ麻雀をやっている。

鷲巣はスーパーマンである。麻雀が強いだけでなく、力も強く、格闘技のプロと喧嘩をしても負けない。また頭がよいと言っても博打脳だけでなく、殺人事件の謎を解いたりもしてしまう(鷲巣を探偵役とするミステリーものも何篇かある。ミステリーとしてたいへん上質である)。鎖のついた鉄球をふたつ、くるくる回してその勢いで空を飛んだりもする。

カイジ」本編に登場する鷲巣は殺人鬼だが、本作の鷲巣は意外に人を殺さない。第一巻こそ敵が殺し合いをするよう誘導する場面もあるが、直接手を下すシーンはない。たいていの場合「人の命を何とも思っていない」のは敵方であり、むしろ他人の命を救うこともある。

特に自分の部下が窮地に陥った時は命懸けて救出に向かう場面が何度もある。もっとも、鷲巣自身は自分が危険な目に遭うはずがないと信じているようなので、危険を冒して、という感覚ではないのかも知れないが、とても部下思いの印象を受ける。「カイジ」本編では、黒服たちがなぜ鷲巣にあれほど忠実なのかが疑問だった。いくら高給でも、あれだけ悪逆非道なことを眼前で繰り広げられたら、愛想をつかしそうなものである。が、本作を読んで納得。これだけのことがあれば、一生鷲巣についていくと決意をしても不思議はない。

つまりは、荒唐無稽ではあるが、とても魅力的なのである。カイジと出会った頃は、長年にわたる激戦のため、脳に障害を負っていたのかも知れない。

ワシズ 閻魔の闘牌 3

ワシズ 閻魔の闘牌 3

Amazon
ワシズ 閻魔の闘牌 4

ワシズ 閻魔の闘牌 4

Amazon
ワシズ 閻魔の闘牌 5

ワシズ 閻魔の闘牌 5

Amazon
ワシズ 閻魔の闘牌 6

ワシズ 閻魔の闘牌 6

Amazon
ワシズ 閻魔の闘牌 7

ワシズ 閻魔の闘牌 7

Amazon
ワシズ 閻魔の闘牌 8

ワシズ 閻魔の闘牌 8

Amazon



漫画・コミックランキング