鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「憎らしいほど愛してる」(全一巻)

2019年7月30日刊。紙版はKADOKAWAより刊行。

いろいろな要素が積み込まれて、手に汗を握る展開だが、一冊で見事にまとまっている。

基本はGL作品だが、それにとどまらず、不倫とか、女の生きにくさとか、会社組織のありかたとか、いろいろな側面が絡む。人間はひとつの側面だけでは生きられない。ビジネス本としても読めるし、男と女のあり方(恋愛にとどまらず)も考えさせられる。

藤村は上司の浅野が好き。浅野に認めてもらうべく仕事に打ち込み、親しく話ができるようになったある日、藤村は浅野に告白する。浅野はそれを受け入れ、関係を結ぶが、藤村は悩む。自分は浅野が好きだが、浅野にとっては自分は遊び相手に過ぎない。自分と別れた後、浅野は夫の待つ家へ帰っていく……

浅野は、家事や自分の両親への対応などを丸投げしてくる夫に対し、良い妻であろうとしたり、そんな自分に苛立ったり、また職場では弱味を見せないよう振る舞い、男性の部下へも気遣いを忘れず、一方、トラブルで客先に謝罪に行った時に相手から、女だからしょうがない的な態度を取られたりと、いろいろと身動きが取れなくなってきていた。そんな時に、自分に一方的な好意を示す藤村と出会い、自分になつく子へのご褒美のつもりで身体を差し出したが……

最後は、藤村にとっては一応ハッピーエンドではあるが、浅野にとってはどうなんだろうな、と余韻が残る。名作だ。



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