江戸川乱歩賞受賞作にして著者のデビュー作。テーマは、人はつぐなえるのか、つぐないとは何かという話。
人を殺した人は、どうしたらつぐなえるのか、何をしたらつぐなったと言えるのか。被害者の家族から見たつぐないと、本人が感じるつぐないは別だろう。
また、「人を殺した」といってもさまざまな状況がある。
- 殺すつもりがないのに、相手が喧嘩をふっかけてきたため、突き飛ばしたら打ちどころが悪くて死んでしまった
- 相手が許しがたい非人道的な行為をしたため、かっとなった(たとえば、自分の恋人をレイプした)
- 死刑の執行人として、執行を行なった
最後の例は、法律的にも道徳的にももちろん罪に問われるわけではない。むしろ、罪を犯した人を法に服させる行為である。しかし、執行人だって感情を持つ人間である。いくら相手が死刑囚だからといって、いくら役目だからといって、こうした行為が許されるのか? と苦しむだろう。言われてみればそうだ。そうした人は、どうそれを正当化するのだろうか。
また、もしそれが冤罪だったらどうするのか。そもそも人は人を裁くことができるのか。
こうしたさまざまな思惑がぶつかり合い、収斂していく話だが、とにかく驚いたのが、死刑がどのように執行されるのか、法律の実際、制度の実際など、非常に細かく調査されている点だ。著者は長く刑務所に勤めていたのではないかと思わされるほどだ。新人といっても、著者はシナリオライターの経験が長いため、そこで培った技術なのであろうが、とにかく力のこもった傑作である。

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