鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

織田信長の登場「アシガール」9

あらすじ

いよいよ婚礼の日が近づき、唯はおふくろ様から閨房の心得について教わり、忠清は野上衆と和議をむすぶべく画策。これは、今後世の中は織田信長が勢力を伸ばしていくであろう、その時、羽木、高山、松丸、野上が争っていてはひとたまりもない。が、この四家が一丸となれば、そうそう容易に踏みつぶすわけにはいかないだろう、そうすれば交渉の余地が生まれ、皆を生かす道も探れると……。忠清は、唯の家にいた間に歴史を学び、その中でいかに羽木があるべきかをずっと考えていたのだ。

そうして野上とも和議が結ばれ、打てる手は打ったと安心するのも束の間、織田の支援を得た高山が和議を覆し戦を仕掛けてきたのだ。さすがは織田信長、この同盟のどこを突けば容易に崩れるかよくわかっている……

高山宗鶴を止めようと小垣に向かう忠清。ついていこうとする唯に、黒羽に残って戦を止めるよう依頼。その意を受け、唯は血気に逸って出陣しようとする羽木忠高らを必死で止めるが……

雑感

間もなく婚礼の日のはずなのに、さらなる事件が勃発。今回は織田信長までが絡んでスケールの大きい話になった。

初めて唯が戦国時代へ行った時は1559年だったから、翌年が桶狭間だなーと思いはしたが、本作にはこれまで実在の人物が一人も出て来なかったため、忘れていた。が、信長(の家臣の相賀一成)の登場で一気に物語がリアルになった。自分程度の人間が言うのもナニだが、史実をうまくなぞっている、というより、信長の近隣に羽木、高山、松丸、野上という国衆がいたら、実際にこうしたのではないか、信長に近寄られた国衆は、ある者は高山宗鶴のように、天下の趨勢などどうでもよく、信長の力を借りて積年の恨みを晴らせればそれでいいとする者もあれば、羽木忠清のように、家名を捨てても家臣や民百姓の命を守ろうとした者もいたのではないか、と思わせるよう、当時の情勢をよく踏まえて描いてある。戦国を舞台としたアチャラカSFコメディというだけでなく、歴史漫画としても一級品である。

それにしても忠清の歴史を読む目も、家臣や民人を思う心も、唯への気持ちも、尊過ぎて涙が出てくるよ……

成之が阿湖姫を口説くシーンも印象の残る。

唯が忠清に、「今からおふくろ様にけいぼーの心得について教わるんですよー」と大声で話すのを聞いた吉乃の「あちゃー」という顔も。


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