- 山田ヒツジ「デキる猫は今日も憂鬱」2(シリウスコミックス)
2019年9月9日刊。
猫漫画になぜ外れがないかというと、猫がかわいいからである。猫漫画を描く作者は間違いなく猫好きだし、そういう人の描く猫は絵柄がどうあれ可愛いものである。
ところが本作の諭吉は、飼い主に懐かない(甘えない)、飼い主が気に入らないことをすると怖い顔して舌打ちをする、それを見て飼い主が震えるという状況で、これで諭吉がかわいいと思えるはずがないのであるが、不思議なことに可愛いのである。料理がうまくできたり、掃除がきれいにできたりしたときに、クックックと笑うところも可愛いし、作者の行動を読んで先回りするところも可愛い。
上司の姪っ子・優芽ちゃんに存在を知られ、懐かれると、正体がバレたら大変なことになると怯える幸来(さく)を尻目に、手土産を持って訪ねて行くところも堂々としていてカッコいい。思うに、諭吉は幸来の、そして多くの読者にとっての「母親」なんだな。食事の支度をしてくれて、朝は起こしてくれて、だらしない、なさけないことをして叱られたりあきれられたりすることはあっても、見捨てられることなく常に味方でいてくれる……
寒くなって幸来はこたつがほしいが、幸来の管理不全から火事を起こしそうになったことがあり、怒った諭吉が処分してしまった。が、きちんとするからこたつを買おう、と幸来がいくら懇願しても頑として首を縦に振らない。……が、町内会の福引の賞品にこたつがあることを知った諭吉が、なんとか当てたいと奮闘するところは可愛い。
結婚する時に諭吉を連れていくというのはいいと思う。昔は嫁入りの時に侍女や付き人を一緒に連れていくのは珍しくなかった(高貴な人だけかも知れないけど)。家事は、誰かがやらなければならないから多くの家で女が押し付けられているので、諭吉がやってくれるなら、夫婦とも家事から解放され、仕事に打ち込んだり、二人だけの時間を持ったりできる。その余裕の時間で、女として、パートナーとして、魅力的であり続けようとすれば、「諭吉がいればお前はいらない」と言われることはないのではないかな……