鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「脱獄のカザリヤ」1

  • 原作・天下雌子、作画・CHIEKO「脱獄のカザリヤ」1(マンガボックス)

2023年4月26日刊。サスペンス&アクション&一種のデストピア物語か。

近未来、世界は1%の富裕者層と貧困層とで構成されていた。貧困層は戸籍の外側にいて人数すら正確に把握されていなかった。国の基幹産業は富裕層が支え、所得が一定水準以下の国民に対する警察権は民間が運営していた。その組織の名は「全国矯正委員会」。「犯罪者」の女は性処理の相手として売りに出され、男は臓器を提供させられていた……

飾矢真紀は、行方不明になった妹を追い、自ら進んで関東矯正院に乗り込んだ。といっても委員を蹴飛ばして転ばせただけ、まあ委員に対する侮蔑的行為は許しがたいということになるのかも知れないが、普通に考えれば微罪である。その上裁判も開かれないどころか調書も取らずいきなりぶち込まれるのだから酷いものだ。

刑務官(?)は超高圧的で受刑者の人権はほとんど認められない。入居した部屋にはボスがいたが、実力で相手を痛めつけると真紀がボスになる。さらに、最初の命令として自分のボスとして振舞えと指示を出す。目立たないように――

同じ矯正院に妹の萌絵がいることが明かされるが……

冒頭の性処理に売られるシーンはアイキャッチのためだろうが、その話はそこしか描かれない。入院時に医師が裸にするが、検査のためでそれ以上の行為はなかった。

1%の最下層の人間が人権を認められず……というならわからなくもないが、99%の側が虐げられるのは非現実的。単純に人数にこれだけ差があると、暴動を起こしたら抑えられないだろう。それに、扱いに悩んだりせず、きちんと教育を施し、働かせれば大いなる生産をあげるはずで、世界観にはリアリティがない。

しかし絵はうまく、話の展開はサスペンスフルである。1巻はとにかく状況説明に終わった。2巻はどうなる?



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