鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「庭に穴ができた。」

  • ダイスケ「庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしてる」1(一二三書房)

2022年12月15日刊。

同題の漫画をアプリで読んでいて、だんだん面白くなってきたのだが、一日に読める量が決まっていてイライラしてきたため、単行本を入手。漫画だと思ったら小説だった。どうやら自分が読んだ漫画はこれをコミカライズしたものだったらしい。

ある日突然庭に穴ができた。ゴミを放り込んでおいたが、翌日になると何事もなかったように穴が開いている。いろいろ入れてみたが一杯になる様子がない。どこまで深いのか。そのうちに産業廃棄物など捨てるのに手間とコストのかかるゴミの廃棄を請け負うようになり、大儲けをするのだが……

星新一の「おーい でてこーい」が下敷きになっていることは疑いがない。これを現代風にアレンジしたもの。星新一の小説では穴の存在は国家公認になっている。穴埋め会社を設立した利権屋がどのくらい儲かったのかは触れられていないが、恐らくさほど設けることはできなかったと思われる。一方本作では、穴ができたのは私有地であり、持ち主はその存在を徹底的に隠蔽する。そのため(ほとんどコストゼロで廃棄物が処理できるから)大儲けをし、それを狙ってヤクザや商売敵がいろいろ妨害してくるが、それを返り討ちにするシーンはバトルものとしての面白さも生んでいる。

星新一の小説との決定的な違いは、穴に入れたゴミが最終的に何処へ行くのか、最後まで明かされないことである。その「わからない」ことがホラーである。穴で生まれた生物(?)が人を殺し、また穴へ帰っていく描写もあるが、これも意味不明。「穴」に敵対する人間を処分したということだろうか。これもホラー。

謎が謎を生んだまま完結しているが、タイトルに「1」とあるのが気になる。解決編の2巻があるのだろうか?



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