鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「とろける鉄工所」4

こういうことが時折起きる。だから人生は面白い。

本作は、大ヒットして書店で単行本が山積みになっていたわけではなく、テレビドラマで放映されたとか、映画化されたとかいうわけでもなく、友人知人に大ファンがいたというわけでもない。作者も作品タイトルも、つい先日まで聞いたことがなかった。

たまたま第一巻が無料で販売されているのを知り、何か琴線に触れるものがあったのだろう、とりあえず購入してみた。しかし、読み始めて、これは自分には合わないと思い、読むのをやめてしまった。無料に惹かれて、変なのをダウンロードしてしまった、とその時は思ったのだ。そのまま……正確には覚えていないが、一年くらいは経ったはずだ。

ある日ある時、ふと読み返してみたら滅茶苦茶面白い。あっという間に一冊読み終え、二巻、三巻、四巻と順に購入しているが、期待を裏切られることもなく、面白さが増している。

こうした出会いはそうそうあるものではない。とはいえ、最近では「穴殺人」「目黒さんは初めてじゃない」も同じような感じではあるが。

単行本は全10巻。今の時代には決して多いとは言えないが、1話4ページの連作短編としては長く続いた方である。さて、全巻買うか、どうするか。この手の作品は、全5~6巻なら迷わず一気買いなのだが、10巻となると金額も張るし、そう気軽には買えない。

4巻では、別れた妻に引き取られた小島さんの子(大竹ケンジロウ・コウジロウ)がさと子に連れられ、小島さんの職場に来るエピソードがハイライト。家まで送って来る、という小島に、残りの仕事は僕らでやっておくので、帰ってこなくていいです、夕食でも食べに行ってください、と声をかける北がいい仕事をした。食事をしていいかどうか養父に電話するブラザーズが、現在の父を「お父さん」ではなく「大竹さん」と呼ぶエピソードや、北さんの言葉を聞いて残業確定した吉川くんの顔など、見どころが多い。



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