鞄に二冊

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「ひらけ駒!」8(最終巻)

  • 南Q太「ひらけ駒!」8(モーニングコミックス)

ひらけ駒! 8巻

ひらけ駒! 8巻

ああ、やっぱりなあ、と思った。

なにがやっぱりなのかというと、あとがきに「また9巻でお会いできたらうれしいです」と書かれているのだ。2012年の12月12日付である。この時点では作者は(編集側も)連載を終わらせるつもりはなく、9巻がいずれ出るものと思っていたのだ。しかし、8巻の発行後、なんらかの理由でそれをやめてしまったということだ。

不人気ゆえの打ち切りとするなら、少なくともそう作者に宣告され、作者もわかって筆を置くはずである。作者の病気などであれば、治ってから連載を続ければいいことだ。一説によれば、LPSA日本女子プロ将棋協会)をかなりのページ数を割いて紹介したことを日本将棋連盟が問題視し、取材を拒否したため連載が続けられなくなった、というのだが、本当だろうか。いささか信憑性に欠ける話であるように思う。

「ひらけ駒!」1巻の感想で、次のように書いた。

モーニングに2011~2012年に連載されていた作品。モーニングはずっと購読しており、この作品も愛読していた。が、宝くんと色っぽいお母さんのことはよく覚えているのだが、ストーリーの展開がどうだったのかまるで記憶にない。最後は尻切れトンボで終わったような記憶もある。最近「ひらけ駒!」載ってないなー、とよく思っていたから。

自分は正しかった。作者自身も最終回だとは思っていない回が結果的に最終回になり、連載が止まってしまったのだから、「最近載っていないけどどうしたんだろう」と思って当然だ。

さて、本巻では宝くんと同い年の高志くんが登場。将棋会館への送り迎えに付き添った高志パパが、子供の熱意に引きずられ、自分も将棋を指すようになり、43歳にして初段を目指す話である。一度道場で宝と指すだけで、基本的には宝とは関係のない話である。この作品にはこうしたサイドストーリー的な話が多い。群像劇というのとも少し違うが、将棋が好きで将棋を指しているいろいろな子や、その親たちを描きたかったのだろう。

本巻には、2巻で登場したきりのみずきちゃんが再登場する。みずきちゃんは2巻当時は小学二年生で、すごく強い。兄がいて、研修会に行っていて、五段なのだそうだ。お兄さんから教えてもらっているんだね、だから強いんだね、と言われるが本人は上の空。父親は兄の成績には一喜一憂するが、みずきが大会で優勝してもあまり嬉しそうではない。みずきちゃんは研修会に行かないの? と訊かれて「お兄ちゃんを追い越しちゃうから」と答えて終わり。

そのみずきちゃんは本巻では3年生だが、ある大会でプロの女流一級に勝つという大金星を挙げる。しかし(相変わらず)お父さんは褒めてくれないし、大阪に連れて行くという約束も「お兄ちゃんの奨励会が……」などと言って果たしてくれない。いつか、パパは私のことを褒めなくちゃいけなくなる時が来る、と(悲しい)決意をする。

最終話は宝ママの話。宝の力になってやりたいが、どうすればいいのかと悩む。この中で宝は、研修会でC1になったら奨励会の試験を受ける、と宣言する。まあ、ある意味、最終回らしい話といえなくもない。けど、これからの宝の成長する様子を(そして、それを見守るママの様子も)見たかったなあ……。


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