鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ボディガード牙」1

2022年4月7日kindle版刊。「英雄の広告」「『神の手』機関VSマフィア」「紅の追跡者」の三編所収。「週刊サンケイ」1972年10月~4月掲載。

電子書籍はサンケイコミックスで再刊された時の版が底本ではないかと思う。表紙の絵柄からすると1980年代だろうか? 最初の単行本を底本にしてほしかった。この版では収録されていない作品が二作あるらしいので。しかしその二作を外したのは外した理由があるのだろうから、かなわぬ望みなのだろう。

雑誌連載時のタイトルは「ボディガード牙」だったが、再刊時に「続カラテ地獄変 ボディガード牙」に変更された。

本作の続編として「カラテ地獄変 牙」が、さらにその続編として「新カラテ地獄変」が発表されたが、三部作の第一部である本作のみ長らく電子化されていなかった。いろいろ検索していた際に、4月に電子化されているのを知り、即座に全巻購入した次第。第一巻が無料なのはよいとして、第二巻以降もすべて33円なのは解せぬ。画像の品質が悪い(大昔に読んだ記憶では、単行本の品質も悪かった。生原稿を紛失し、雑誌媒体から起こしたのでは? と個人的に推察)せいかも知れないが、ダンピングし過ぎだ。200~300円くらいはつけていいはずだ。

空手バカ一代」は1971年から始まっているが、「紅のチャレンジャー」は1973年から。中城健は、空手もキックもまだ表現が未熟ではある。絵柄そのものがまだ安定しておらず、少し前の時代の漫画家の絵がいくつか想起される。

空手バカ一代」との対比で、少年(少女)向けにきれいごとを描いた「空手バカ一代」と違い、青年向けの本作はエログロがてんこ盛りである……という評があるが、自分が初めてこの作品を読んだ時の印象は、梶原一騎版の「ゴルゴ13」だな、というもの。銃を使わず素手であること、攻撃は仕掛けずボディガードに徹することを特徴としているが、それ以外はゴルゴに酷似している。牙直人の顔もデューク東郷に似ている。

女性が悲惨な目(性的暴行など)に遭うのはいかにも梶原一騎で賛否の分かれるところであろうが、巻き込まれる「政治」が分かりにくい。50年も経ったからわからなくなっている部分もあろうが、当時から分からなかったし他作品でも同様だ。「ゴルゴ13」の方が分かりやすい。「ゴルゴ13」が大人気になったのは、こうしてみるとよく分かる。



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