鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「貝原益軒の歴史夜話」

2020年5月25日刊。

本書の成り立ちは少々面白い。原典は貝原益軒の「朝野雑載」(全15巻)。この書には戦国時代の逸話が豊富に収録されているそうだが、量が多いため、選りすぐりのエピソード集としたのが本書だとのこと。現代文に移し替えただけではなく、貝原益軒が主君である福岡藩三代藩主・黒田光之に連夜にわたって語り聞かせた体をとっている。

現代の読者にとって読みやすいようにという配慮であろうが、内容はあくまで貝原益軒のレベルということなのであろう。現代の認識では疑問のある、もしくは間違っていると思われる箇所が山ほど出て来る。今川義元が信長に負けたのは、公家趣味にうつつを抜かし武士の本分を怠ったからだとか、浅井長政が信長を裏切ったのは、朝倉義景との関係を重視したからだとか。貝原益軒はそう考えたいたのであろうが、現代に発行する本であれば、せめて注を入れた方が良いのではと思う。あまり若い人に薦められる本ではない。

ところで、自分はこれまでたびたび、松永久秀荒木村重を取り違え、混乱に陥ることが多々あった。足利義輝を殺したのが松永久秀黒田官兵衛を幽閉したのが荒木村重。「麒麟がくる」で吉田鋼太郎が演じたのが松永久秀。「軍師官兵衛」で田中哲司が演じたのが荒木村重。それが、本書で「二人は似ている」と書かれていたので、我が意を得たりの思いであった。



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