鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「シャーロック・ホームズの冒険」

角川文庫のホームズシリーズで、本作のみ石田文子の訳である(ほかは駒月雅子)。理由は不明。駒月との差異も明確にはわからないが、深町眞理子訳に比べていくらか柔らかいという点は共通のようだ。

ところで本作では、たとえば「ギニー」という言葉が出て来た時に「1ギニー=21シリング」のような説明がなされる。これが無意味とは言わないが、それよりも知りたいのは、円に換算するといくらくらいなのかだ。が、これに関しては自分の知る限りの訳本で説明がない。時代を超えての貨幣換算は難しいから、簡単にはいえない、それが知りたければちゃんとした解説書に当たれ、ということなのかも知れない。

「花婿の正体」では「独身の女性なら年に60ポンドもあれば何不自由なく暮らせるはず」というセリフが出てくる。また「ぶな屋敷」では家庭教師として「40ポンドでもいい人を雇えるのに」と言われている。前者は親と同居、後者は食住付きの職のようだから、家賃も食費も負担しなくていいとして、独身の女性が一人前に生活できる収入はと考えると、1ポンドは4~5万円くらいかと思われる。

そうすると、「ボヘミア王のスキャンダル」でホームズは「当座の資金」として1000ポンド受け取っているが、これは現在の貨幣価値に直すと4~5000万円ということになる。当座どころが成功報酬としても破格である。「緋色の研究」や「四人の署名」では金銭的に十分な報酬が得られたとは思えないが、この頃からホームズの金回りは急によくなっていったのだろう。


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(2020/1/9 記)