鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「プレイボール2」8

待ちに待った新刊である。巻末には千葉一郎(ちばあきおの長男)と江口寿史の対談がある。この中で、プレイボールのリメイク作品を作るのは承知していたがここまで絵柄をそっくりに寄せて描くとは思わなかった、と二人とも驚いていた。僕はむしろそれをごく当然のこととして受け入れていたのだが、考えてみれば近年は作者以外の作家によるスピンオフが大流行で、「北斗の拳」に対する「イチゴ味」「拳王軍 ザコたちの挽歌」「銀の聖者」とか、「天」に対する「HIRO」とか、いずれも登場人物が誰であるかがわかる程度には似せてはいるものの、基本的に作者自身の絵柄で描かれている。これはこれで違和感がない。

しかし、これらはあくまでも「番外編」である。「プレイボール2」は「続編」という位置づけだから、ちばあきおそっくりに描くことに意義があると考えて実行したのだろう。

ただ、単にコピーするだけならそう難しいことではあるまいが、そのコピーたちに新しいドラマを紡いでもらうためには、新しいポーズ、新しい表情を次々にしてもらわないといけないわけで、これはプロの漫画家にとっても簡単ではないのだろう。この絵は、原作のあの絵そっくりだな、あれを見ながら描いたんだな、とわかる絵が頻繁に出現する。仕方のないこととは言え*1、少々残念である。

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コージィ城倉「プレイボール2」
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ちばあきお「キャプテン」

さて、本巻では5回戦の大島工業戦の大詰めと準々決勝の川北戦の序盤が描かれる。緻密に描きたいのはわかるが、スピード感がなく、話がなかなか先に進まない。まあ谷口最後の夏だし、川北も(恐らく次に当たるであろう)谷原も、因縁の相手だからなぁ……。


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(2020/3/19 記)

*1:1970年代、80年代の野球漫画には、水島新司の漫画のあるシーンを真似して描いたなとわかる絵をあちこちで目にした。漫画界はこういう現象をある程度許容する空気がある(ように思われる)けど、読者からしたらこういうのは「仕方ない」では済まされないと思う。