鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「モトヨメ 女流華道家編」

モトヨメシリーズ最終巻。

シリーズ四人の主人公の中で、本作の主人公である彩が個人的には一番可愛いと思う。オフの時の茶目っ気たっぷりの顔は好きだ。

また、胸が大き過ぎもせず、痩せ過ぎでもなく、身体も一番まともだ。

別れたあとも、彩の目的は「子作り」なので、元夫の一馬と「交流」を持っても避妊しないのはわかる。

邪魔者の蓮美がいなくなって二人がよりを戻すというのも納得の行く話で、四作の中で本作が最も欠点の少ない作品になっている。

ただし、一馬の男性器は大き過ぎである。男性視点のエロ漫画だと男性器は大きければ大きいほどいいことになっているが、そんなわけはないことは、女性である作者にはよくわかっているはず。そのあたりはどう折り合いをつけていたのか。

それにしても蓮美には腹が立つ。夫婦の閨をわざわざ覗いて、はしたない声を出すなとか種馬かとか、彩も一馬も侮蔑しておいて、二人がどちらも文句を言わないのは信じられない。こういう女には天罰が下ってほしかったが、そうはならなかった。

マジに分析すると、蓮美は嘉納流を継ぐ才能が自分にはないことに対する絶望や、そのために幼い彩にすべてを託さざるを得ないことへの罪悪感があり、一方彩も、やはり自分にそこまでの才能があるのかという不安、経験の浅い若い自分が嘉納流を背負っていかなければならないプレッシャーなどがあり、互いに共依存のような関係にあった……ように思える。蓮美の彩への過度な干渉もそうだが、蓮美に対して一切逆らわない、逆らえない彩も、心に病を抱えていたと考えるべきだろう。

だから最後、蓮美が家を出て、彩と別々の道を進むのは、二人にとっていい結果を生むだろうと思うのだ。そう考えると、シリーズ最大のハッピーエンドである。


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(2020/3/28 記)