- 吉宗「彼女ガチャ」1(芳文社)
一読して、「走馬灯株式会社」を思い出した。その感想に、次のようなことを書いた。
場所や時間を特定せず、それを必要とする人の前に超常現象が起きる。あるいは、超能力を持った人が現われる。そして、当人の希望によりその超常現象を体験するが、その後はたいてい事前に期待した通りの結末にはならない……という物語の原型は、どこにあるのだろうか。著名な作品だと「笑ゥせぇるすまん」がこのパターン。Wikipediaには、「謎の多い主人公が不思議なグッズを紹介し、それに翻弄される一般人の様子を描く」というスタイルは1990年代以降、多くのフォロワー作品を生み出すこととなった、とあるが、自分が好きで熟読した作品だと、曽祢まさこの「呪いのシリーズ」もこの系統。初出が1989年3月であり、「笑ゥせぇるすまん」のフォロワー作品とは言えないだろう(長く続けるうちには影響を受けた部分もあったかも知れないが)。
読み返すと、何を言っているんだろうとオカシイ。これはそもそも、悪魔が三つの願いをかなえてくれるというアレだろう。超常現象であり、それによって自分がすごく得をすると思いお願いするが、だいたい幸せにはならない。この亜流は日本でもヨーロッパでもたくさんあって、古くから伝わる普遍的な枠組みなのかも知れない。
その悪魔をどのような形で登場させるか、そしてどのようなオチをつけるかが、作者の腕の見せ所である。それで、本作は「ガチャ」というのがいかにも今風である。この子らはいつからガチャの中に入っているのか、引かれて転がり落ちて来る時にケガをしたりしないのか、引かれた子はなぜ引いた男が好きなのか、引かれなかった子はどうなるのか、そういう疑問は感じてはいけないのだ。
(2020/5/1 記)