鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「穴殺人」1

  • 裸村「穴殺人」1

主人公の黒須君はアパートの一人暮らし。二浪中だが予備校もやめてしまい、激怒した親から仕送りを止められ、自殺しようとしたが失敗。ふと壁に空いた小さな穴から覗いてみたら、隣の部屋が丸見えだった。隣に住むのは女性で、かなりの美人だ。黒須は穴から
隣人の私生活を覗くことに取りつかれてしまう。

彼女は宮市莉央。大学院生で黒須の二歳上。彼女の食事、着替え、果てはオナニーなど……を見つめ続ける黒須だが、ある時、彼女が部屋で男を殺すところを目撃してしまう。しかもそれは一度や二度ではない。彼女はシリアルキラーだった!

こういう話は好きである。設定が甘いとか、絵に迫力がないとか、いろいろ批判はできようが、だからこそリアルではなく、架空の話として感情移入することなく物語を楽しむことができる。ただし、話の展開は畳みかけるように次々と予想外のことが起き、ハラハラドキドキは連続し増幅する。サスペンスとしては優れていると思う。

黒須が目撃した、最初の被害者は、宮市をレイプしようとした。だから必死で抵抗した結果、殺す羽目になってしまったのかと思ったが、次はわざわざ連れ込み、薬で眠らせてから殺した。しかもそれは複数回繰り返された。殺すのは部屋でとは限らず、街中で殺すこともある。死体の処理をどうしているのかと思ったら、それはそれで別動隊がいる。

ついに、というか、黒須が宮市の殺しを目撃していることを宮市に知られてしまう。が、なぜか宮市は黒須を殺さない。そして二人は付き合うことになる。

黒須は宮市に恋しているが、宮市は実際のところ、黒須をどう思っているのかはわからない。ただ、少なくとも人前では、黒須に対する恋心を満面にたたえたような表情をし、腕を組んだりするので、周囲からはうらやましがられる。なんで黒須のような冴えない男にこんな美人の彼女が? というわけだ。実際、黒須の前に出た時の宮市は本当にかわいい。これも本作の魅力のひとつである。

宮市はキスはするがセックスは拒絶する。黒須に対してだけではなく、誰に対してもそうらしい。単にその気になれないだけなのか、何かトラウマがあるのか、それはわからない。

黒須の部屋に刑事が訪ねて来るところで一巻が終わり。続きが気になるに決まっているじゃないか。



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(2020/6/27 記)