鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

素晴らしいラストシーン「とろける鉄工所」10(最終巻)

最終巻。各人にいろいろと転機が訪れる。

今井はパン作りの道を究めるため、彼女を置いて修行の旅に出る。店はどうなるのかはなはだ心配だが、彼女との仲は悪くないようである。

池谷が次期社長かと小島らは想像しており、池谷より涼ちゃんの方が貫禄があるとか、涼ちゃんはダンナを立てるだろうとか勝手なことを話していたが、社長があと20年、85になるまで社長業を続けるつもりであることが判明した。

なお、念願の(?)沖縄への社員旅行も実現。北さんは奥さんとポコちゃん(最近本名の「孤太」はすっかり忘れ去られている)を同道。小島はさと子を同道。社長は昨年の無念を晴らすことができ、涙した。

さと子は教師になりたいと思い、大学の教育学部へ進学するが、社員旅行で北の家族を見、アルバイトの家庭教師先の家族に接し、自分は教師になりたいのではなく家族を持ちたかったのだということに改めて気付く。そのことを父に報告し、「なんで気づかんかったんじゃろ……」と言うさと子に、「わしゃ知っとるで……。気がつかんかったんじゃのうて、かき消すしかなかったんよ」とつぶやく小島に泣かされる。小島は、さと子の希望は叶えてやれなかったけど、さと子のことはちゃんと見ていたのだ。

吉川は、自分がさと子が付き合うにふさわしい相手だとは思っていないし、好きだという気持ちもとても口に出せないが、さと子のことが気になって仕方がない、そうした自分の気持ちを持て余していた。が、北から親衛隊になればいいじゃないか、と言われて悟りを開く。自分のポジションを見つけて吉川なりに納得し、仕事も前向きに。

さと子の弟、ケンジローとコウジローも工業高校を卒業。

北は、小島さんみたいに道を歩んでみたいと小島に話しかけるが、お前には無理と言われる。小島いわく、

ものづくりには技術がいる。「技」やら「術」の腕があって、はじめて一人前の従業員よの。んでその「技」と「術」で客を心底喜ばすことができたら、それが「芸」。客が腰抜かすくらいええもん作れたらええよの。その「芸」を極めた奴が行けるんがものづくりの「道」なんじゃなーか?

また別の時に、北は小島からこんなことも言われる。吉川は指示しなければ何も見つけられないが、やるとわかれば自分の満足いくようにする。自分も、石井のとっつぁんもやりたいようにやる。今井なんかひどい、やりたい放題だ。……なんか、お前だけやらされているよ。好きにやればいいんだと。

そして北なりに、自分のやりたいようにやるとはどういうことか考えた結果、5月のゴールデンウィークに連休を取り、家族で香川にうどんを食べに行きたい。そのために今度の日曜は休日出勤する、と決める。そして日曜、奥さんに弁当を作ってもらうが、持って行くのを忘れてしまう。そうしたら奥さんがのろ鉄工まで(ポコちゃんを連れて)お弁当を持って行き、「ぺー君、持ってきたよ」といって渡す。2ページ見開きの大ゴマで渡す。

最終巻のラストはどんな風にしめくくられるのかとあれこれ考えていたが、これ以上にない、最高のラストシーンだった。


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