- 安野モヨコ「監督不行届」
作品自体は結婚直後の2002年4月から「FEEL YOUNG」*1で連載が始まり、2005年に単行本化された、かなり古いものである。が、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の大ヒットと過日NHKで放映された「プロフェッショナル」の影響で、最近また注目を集めているようである。特に「プロフェッショナル」に安野モヨコも登場したことで、「実写版・監督不行届だ」という声もあり、それで「ちょっと読んでみようか」と買ってきた。
結論を述べると、自分にとっては全く面白い作品ではなかった。
そもそも自分は庵野秀明のことはよく知らない。「シン・ゴジラ」は劇場で見て、すごいと思ったし、庵野の才能も感じたが、それだけ。エヴァンゲリオンは見たことないし(今のところ)見ようとも思っていない。
また、安野モヨコも特に好きではない。「働きマン」はモーニング連載中はそれなりに面白く読んでいたが、単行本は1巻だけ買って、まあいいかなとなった。それ以外の作品は知らない。
少なくともどちらかを好きであればともかく、どちらも好きでなければこの作品を面白いと思えなくても当然かな、とも思う。
しかし、それを言うなら、「将棋の渡辺くん」はどうだ。渡辺明という棋士は、名前くらいは知っていたが僕は全然関心がなかったし、伊奈めぐみなんて漫画家は全く知らなかった。が、この作品は実に面白いではないか。本職においてはずば抜けた才を持っている、それ以外は漫画好き、ぬいさん好きのかなり変わった人物であるところの渡辺明氏を、おもしろおかしく可愛らしく、そしてわかりやすく描いているのだ。
ひとつの要因として、作者が自分自身をおむつをした赤ん坊(パンパースくん)として描いているのがよくないと思う。赤ん坊が大人の言動をする点でキモイ。そもそもこの赤ん坊は可愛くない。安野の他のエッセイ漫画を知らないが、狂言回しとして登場するのであればともかく、主役として登場するのであれば、それなりに魅力的でないと困る。なにも突出した美人に描くことはないが、親しみやすい、愛嬌のあるキャラというのはあるのではないか。高橋留美子のけもさんを見よ。
巻末のオタ用語解説も不要だ。1~2ページならともかく15ページは多過ぎる。知りたい人はWikipediaでもなんでも調べてみれば、もっと詳しくわかるし、知りたくない人にとっては不要な情報。こんなことのために15ページを費やさないでくれと思う。この分も本の値段に含まれているのだろうから。
ファンの人には申し訳ない。きっと、興味ある人には面白いのだろう。