鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「最後の一球」

2006年11月28日刊。

実に読み応えのある作品だった。このような感慨は、小説でなければ味わえない。

名探偵・御手洗潔シリーズの一冊。が、本作においては御手洗はそのキャラクター性を発揮はするが、活躍はしない。そもそも登場するのは全体の1/3にも満たない。

全体の2/3ほどは、とある男性が、プロ野球選手を目指して必死で努力し、甲子園に出場し、ノンプロに進んで都市対抗で準優勝し、プロ入りして二年間、奮闘するさまを描いている。投手だが、ライバル打者との駆け引きなどは、野球に詳しい人でも十分満足がいくと思われるほどきちんと描かれており、スポーツフィクションとしても立派に成り立つ作品である。

が、そのような純真で努力家であるはずの選手が、詐欺まがいの行為の被害に遭い、人生を踏み外していくさまは痛々しいが、真に迫って来る。社会派小説としてもレベルが高い。

しかし、冒頭で提示された謎が後半でどんどん解けていく様は、ミステリーならではの爽快感もある。

御手洗潔シリーズは、玉木宏主演の映画やモーニングに掲載された漫画は読んだことがあるが、島田荘司の小説を読むのは初めてだ。



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