- 原作・工藤かずや、作画・平野仁「哀シャドー」1, 2, 3(グループ・ゼロ)
諸橋直人は、兄が父の跡を継いだ諸橋コンツェルンの乗っ取りを企み、兄と他三人を殺し、妻である悦子が疑われるよう仕向けた。これは成功し、警察も検察も悦子が犯人であると判断、死刑が確定した。
一方、G機関の郷田は、自分の手下に殺し屋を必要とし、死刑が確定した諸橋悦子の命を助ける代わりに言うことを聞かせようと試みた。なぜ悦子に目を付けたのかはわからないが、四人も無残に殺した点を買ったのかも知れない(郷田も悦子が殺人犯だと信じていた)。どうせ死刑囚だから、暗殺に失敗して殺されても構わないくらいの感覚はあっただろう。他の二人、恵と由香も、はっきりとは語られないが、人を殺した経歴の持ち主だったようだ。
そうすると、直人の陰謀で死刑を執行されるところだったのを、とにもかくにも止めてくれた郷田は、悦子にとっては命の恩人である。もっとも郷田は悦子に、肉体を武器に人を殺すことを強要するわけだから、どちらが地獄かわからないが。
郷田の計算違いは、実際には冤罪であった悦子が、真犯人を見つけるべく独自に動き出したことだ。さらに、郷田に従うことだけを考えて虚無に生きていた恵と由香までが悦子に同調し始めた。自分の掌を超えた三人を抹殺しようとして返り討ちに遭うとは、G組織も案外頼りない。いったい、どういう組織だったのだろうか。
悦子が冤罪だとわかっていたら、配下にしようとは思わなかっただろう。だから命を助けず、悦子は死んでいたわけで、誠に救われない話だが。
実際に四人も殺した直人が(直接手をかけたわけではないとしても)、悦子以外の人間から全く疑われることなくきたが、日本の警察はそこまで間抜けではなかろう。青木の証言だけで決まるわけはないが、作中ではその手は全く描かれなかった。