鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「彼女との上手な別れ方」

  • 岡本貴也「彼女との上手な別れ方」(小学館文庫)

2013年9月11日刊。単行本は2010年5月刊。

蔵書から見つけた。が、作者名にも題名にも記憶なし。面白そうだと思って読み進めたが、内容にも覚えがない。10年もたっていないはずなのに、この記憶力のなさは恐ろしいが、その分楽しんで読むことができた。

ミステリーかと思ったが、そうではなく、ロマンス小説? まあ定義はなんでもいいが。

ガジロウとユウコが交代で記述する、トリッキーな叙述になっている。

ガジロウはチケットの違法転売で口に糊する、あまりまともではない人間である。ユウコはシングルマザーのストリッパー。ある日、ユウコの乗る自動車は、酔ってふらふら道路に出て来たガジロウを避けようとして電信柱にぶつかり、運転手とユウコを含む乗客4名が死亡する。が、4人とも未練を抱えているせいか、成仏できずに地上にとどまり続ける。が、彼らの存在は誰にも見えず、彼らの声は誰にも届かない。

ところが、なぜかガジロウだけは彼らが見え、彼らの声が聞こえることが判明した。それを知った4人は、自分の残した少なくない貯金をガジロウに渡す代わりに、ガジロウに様々な用事を押し付ける。

4人にとって、ガジロウは信用できる人物ではないから、本当は関わりたくないが、自分たちの声が聞こえるのが彼しかいないから仕方なく付き合う。ガジロウは叩けばいろいろと埃の出る身体だが、頼まれごとには嫌とは言えない性格もあり……というドタバタ喜劇が中盤まで続く。

が、4人が死ぬまで、そして死してなお執着するものを見せられ、自分は今まで何かに必死になったことがあっただろうかと、ガジロウが悩み始めるところがターニングポイント。それ以降は、いつか再読することもあるかも知らないから書かないが、なかなか感動する展開だ。

岡本貴也の本業は脚本家・演出家だそうで、小説は現在に至るも本作のみらしい。ぜひ小説も書いてほしい。

本作は2014年に「想いのこし」という題で映画化された。ガジロウは岡田将生、三人の女は広末涼子木南晴夏松井愛莉、ジョニーは鹿賀丈史だそうである。岡田将生はいかにもなキャスティングだが、広末はどうだろう。木南は見てみたい気もするが、Amazon primeにはない。


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