鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「タイムスリップ・コレクター」

  • 根本尚「タイムスリップ・コレクター」(札幌の六畳一間)

2023年8月27日刊。表紙を含め89ページ。古書編・音楽編を所収。初出は、古書編が2016年5月5日(コミティア116)、音楽編が2016年10月23日(コミティア118)。

その時代にはごく普通に手に入ったが、今となっては入手は極めて困難なもの、というのはたくさんある。あの時のアレが今見たい、ほしい、という気持ちは、年を経た人間であれば、誰でも多かれ少なかれ持っているのではないだろうか。ましてコレクターなら。

そんな思いを叶えてくれる作品である。

タイムマシンが仮にあったとして、過去の世界へ行って買い物をするためには、当時のお金がなくてはならない。現在の紙幣は使えないのだ。古銭商などを回って集めるととんでもなく高価につく。といって、当時の社会へ行って働いて当時のお金を稼ぐのは現実的ではない。いつもここが引っかかっていたのだ。本作でも「古書編」では苦労しているが、「音楽編」では鮮やかに切り抜けている。

「音楽編」では、過去へ行って現代のヒット曲を自作と偽って歌う誘惑に駆られた主人公が、「ロックじゃない」と断念するところがカッコよかった。*1

自分だったら、あの本がほしい、あのレコードがほしかった、ということを思い出させてくれる。「食べ物編」とか「化粧品編」「昆虫採集編」など、構想はあるが描く機会を逸しているという。続編が出たら、ぜひ読みたい。



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*1:かわぐちかいじに「僕はビートルズ」という作品がある。ビートルズが誕生する直前の世界へ行き、ビートルズの曲を自作と偽って順に発表していくというもの(原作・藤井哲夫)。神をも恐れぬ行為とは、まさにこのことを言うのだろう。