鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「見えない復讐」

単行本は2010年9月1日刊。文庫本は2013年9月25日刊。蔵書の再読。

憧れの人が自殺したことを恨み、大学に復讐を誓う田島祐也と同調者二人。この三人がいかに復讐を企てるのか、という話かと思いきや……

復讐するにも先立つものが必要だ、というわけで三人で起業。そしてベンチャーキャピタルである小池規彦に投資を募った。小池は田島が大学に恨みを持っていることを見抜き、それをけしかけるため出資を決意。実は小池も大学に恨みを持っていたのだ。

会社が順調に利益を上げ、田島と小池の付き合いが長くなり、田島は、自分たちが大学へ復讐しようとしていることを小池に見抜かれていることに気付く。その上で自分たちをけしかけようとしていることも。が、小池は対応を誤ってトラブルを引き起こしてしまう……

最終的に復讐は実行されるが、そのためにどのような準備をし、どのように実行されたのか、どうやって証拠を消したのか、等については一切描写がない。メインは田島と小池の心理戦だ。復讐しようとする者、自分の手を汚さず復讐させようとする者……

田島らが、費用を稼ぐために会社経営を続ける中で、発端となった事件の真相に気付き、復讐先を変更するところは、虚を衝かれた。ここが白眉と言えよう。

小池の死に際しては、最後に会ったのが田島であることがわかっていながら、なぜバレなかったのかはいささか不思議だ。