- 石持浅海「殺し屋、続けてます。」(文春文庫)
単行本は2019年10月刊、文庫本は2021年11月9日刊、連作短編集。七編所収。「オール読物」掲載作品。「殺し屋、やってます。」の続編。
富澤允という殺し屋の扱う事件を描いたもので、殺す瞬間の描写はちょっと迫力がある(場合もある)が、殺される人がどんなに酷い人かが描かれることはなく、依頼者がどれだけ恨みつらみを持っているかが説明されることもない。そもそも殺し屋は依頼者と顔を合わせない。
では何の話が描かれるのかというと、殺される人にまつわるちょっとした……(ちょっとしていないこともあるが……)謎を、殺し屋が解く、というものだった。
本書では少し趣が変わってきている。富澤の彼女が「カフェで出会った不思議な体験」を語って聞かせたところ、同業者の存在にたどり着いた。その直後、カフェの店員がプロに殺されたとしか思えない方法で死んだ。
以後、同業者の物語と交互に語られ、最終話で二人が同じ事件を請け負うことで遭遇する。
同業者が、富澤とはまた違ったシステム、違った価格体系で仕事をしているのが興味深い。プロとしてレベルの高い仕事をしている点は同じ。ただし同業者がどのようにしてそうしたスキルを身につけたのか、どうやって「殺し屋」のシステムを構築し、どのようにして集客しているのかは、一切語られない。これは富澤の場合と同じだ。
巻末の解説(ここのところ単行本ばかり読んでいたから「解説」があることに感激している)では第三巻に期待するとあるが、一応オチはついてしまっているので、続きはないのではないか。もっとも、石持のことだから、その気になればあっと驚く展開があるだろうが。