鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「女殺し屋 銀猫」2

2020年6月1日刊。123ページと、通常の単行本としては薄い。オリジナルは1974年12月12日、文芸社刊。こちらは10章まで収められているらしい。紙の単行本一冊がkindleでは三分冊になったということのようだ。

第四章、第五章は過去編。水城理沙は孤児院で成長し、就職し、そこで初めて心から愛することのできる男性と出会う。この男は内閣調査室に所属する諜報員だった。そして、理沙にも諜報員になるよう誘う。この男のためになるならと引き受けた理沙は、厳しい特訓を受けさせられる。銃器の扱い、潜入・脱出のテクニック、空手・柔道などの体術、そして性技……。が、男は理沙を愛していたのではなく、組織のロボットとして理沙を働かせるために罠を仕掛けた、単なるスカウトに過ぎなかった。それを知った理沙は男を殺し、組織を抜け、フリーランスの殺し屋になった、という次第。

理沙の抹殺のために動く組織。追っ手を返り討ちにする理沙。理沙が女だてらに一流の殺し屋であることはわかっているのに、追手が間抜けなのはご愛敬。まだ組織は私を解放してくれないのかと悩む理沙だが、黙って消えただけならまだしも、組織から支給された銃や毒薬を使って組織未公認の殺し屋家業をやっていては、許されるわけはないだろう。放っておいたら組織の屋台骨が揺らいでしまう。

第六章は面白い。殺されかけた男を助けたのが縁で、仕返しの依頼をされた理沙。女好きの暴力団の組長が男の妻に手を出し、男を邪魔者扱いして殺すよう命じたとのことで、組長抹殺に動いた理沙だが、組長に近づいてきたのは女の方であり夫を殺すよう持ち掛けたのも女だというのだ。夫が死ねば多額の保険金が入るからと言って……。

真相を知った理沙は、組長に次いで男の妻も殺してしまう。正義ではなく依頼者の依頼に基づいて殺しを行なうのが殺し屋なのだから、自分の感情で人を殺していてはダメだろう。それに依頼者にとっては妻が戻ってくることが最大の望みなのだから、殺してしまってはダメだと思うが。こうした点は「ゴルゴ13」の対極にあり、興味深い。

男性キャラクターと女性キャラクターの絵柄がまるで違っているのはどうしてなのだろうか。顔つきだけでなく、スタイルも相当に違う。男の下半身は棒のように細いが、女性は肉感的だ。意図的に変えたとしても、差があり過ぎる。一説によると、女性を描くのが苦手な佐藤まさあきは、女性は松森正川崎三枝子が描いていたということだが、だとすると逆に、複数人で手分けして描いたとは思えないほど溶け込んでいるのは、それはそれですごい。



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