鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

他人の視線におびえて

短編集。比較的最近発刊された本だが、収録されているのはほとんどが約10年ほど前の作品である。最近北川歩実が人気なので、過去の文庫未収録の作品が刊行されたということらしい。

北川歩実明野照葉とほぼ同時期に知った。初めて読んだ作品は「長く冷たい眠り」。よくよく考えてみれば、明野と北川はかなり味わいの異なる作家なのだが、どちらもこれまでに読んだことのないような奇妙な味の作家で、かなり長い間両作家を混同していた。

本短編集に集められた作品は、他人の視線に怯える人物が登場することで共通する。もっとも、すべて殺人事件が起きており、人を殺せば他人の視線が気になるのは当然だから、それだけで特徴とするのは不思議な気がするが、ここに出てくる人物はどこか病的だという点で他の作品と違うのだ。

また、ミステリーゆえ「意外な結末」というのはある意味では当たり前なのだが、これも、彼女の作品における意外性は、ミステリー一般のひとつ上をいく。ミステリーを読み慣れてくると「意外」も普通になるが、北川作品の「意外性」は本当に「意外」に感じることが多い。

文庫化された彼女の作品は13冊、そのうちこれが6冊目。早く全作品を読みたいが、なかなか書店に置いてなくて。

熱い視線 (徳間文庫)

熱い視線 (徳間文庫)