鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「穴殺人」8(完結)

  • 裸村「穴殺人」8(完結)

粗筋(ネタバレあり)

孫子すばるを殺し、宮市莉央を奪回するため、黒須と榊は勤務先の介護施設に潜り込むが、安孫子は知っており、劇激準備が整えられていた。シュナイダーと山際春子も同様に施設にたどりつく。どうやら黒須らもシュナイダーらも、忍び込んだつもりが誘導されていたのかも知れない。

榊は双子だった。しかも同じ性格・能力を持っていた。確かに一人は殺されたが、ここにいるのはもう一人というわけ。そして榊から、榊兄弟と宮市、安孫子は幼い頃から知り合いだったことを聞かされる。特に榊と安孫子は同じ悪徳養護施設で育てられた仲で、そこでサイコパスとしての資質が開花して行ったのだ。二人は宮市の高い資質と才能に憧れ、榊は宮市を妻にしたいと思い、安孫子は宮市のようになりたいという思いをふくらませていた。

黒須らとシュナイダーらを襲おうとした施設の刺客らは撃退されたが、安孫子・宮市のもとにたどりついたものの、安孫子は黒須を殺そうとして瀕死の重傷を負わせ、山際春子を撃ち殺し、榊は「敵討ち」としてシュナイダーを殺し、榊と安孫子は撃ち合って二人とも死ぬ。

集まってきた施設の職員に取り囲まれるが、一連の殺し合いの現場と黒須の声を聞いた宮市はかつてのシリアルキラーとしての自分を取り戻し、カッターナイフを手にして襲ってきた全員を一瞬にして殺す。そして、今度こそ黒須を自分の手で殺そうとするが、この時黒須は、一方的に殺されるのではなく、同時に殺し合うことを提案。それでこそ愛が永遠になると。

そこへ延命寺玲奈が赤ん坊を連れて登場。それは黒須と宮市の子どもだった。意識が失われつつある中、黒須と宮市は自分らに子供がいたことを知るが、そのまま息絶える。

15年後……

その子は、生きる目的も、人生の幸福とは何かもわからず、ついに自死を試みるが、ふとアパートの壁の穴を覗いたら、そこに隣の部屋の女の子が見えて……

雑感

榊の双子説は笑ってしまった。そこまでこじつけなくても、もう生きていたということで話が進んでしまっているから、それでいいのに。また、榊が安孫子と兄弟のように育ったこと、宮市と幼なじみであったことなどは後出しじゃんけんのようでもあるが、記憶を失った宮市が記憶を取り戻し、黒須と「永遠の愛を誓う」儀式を継続させるためには、これだけの仕掛けが必要だったということだろう。

二人の子の登場は意外ではあったが、納得。ふたりが結ばれた時、あのような追われている状況下で廃校に駆け込んでシャワーも浴びずに致すしかなかったわけだから仕方ないが、避妊をしている様子がなかったからそこは気にはなっていたのだ。黒須は死んでいくのだから、今さら避妊もくそもないが、妊娠する方の性である宮市は(予定としては)生きていくわけだから。

最後に「穴」に戻ったのは悪い終わり方ではなかった。

1~8巻を総括すると、最初の6巻は文句なしに面白かった。とにかく次にどうなるか全く予断を許さず、だれたところもなく、急展開が続いて行く。まさしくジェットコースター・ストーリィだった。ただ、宮市と榊が死んだ後の話の進め方は、話をまとめるために致し方なかったとはいえ、復活の理由(実は死んでいなかった、双子だった等)もありきたりだったし、安孫子の登場も唐突感が否めない。ただ、宮市の記憶が戻ったあとの展開は良かった。最後に持ち直してうまくまとめた感じ。

とにかく、こんなにのめり込んで読まされた作品は近年では珍しい。同じ著者の別の作品も読んでみたい。



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