鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「将棋の渡辺くん」1

僕は祖父や父に将棋を教わり、小中学生の頃はクラスメートとよく指した。世代というか時代というか、当時は男の子であれば将棋のルールくらいは知っているのが普通で、遠足などの時にはマグネット式の将棋盤を持ってくる人がクラスに何人かいたものだ。トランプに比べると、二人しか参加できないという問題はあるが、揺れるバスの中ではトランプよりマグネットの方が落ちたりしないメリットはあった。

高校生くらいから全く縁がなくなったため、今ではかろうじてルールを覚えている程度。プロの棋士も、長い間、建部和歌夫(小学生の時に彼の書いた入門書を読んだから)、加藤一二三羽生善治村山聖(「聖の青春」という映画を見たから)の4人くらいしか名前を知らなかった。

最近になって藤井聡太の名前を知り、彼が誰と指して勝った負けたと報道されるのに接しているうちに、羽生善治が無冠となった今の将棋界では、渡辺明が実力ナンバーワンだということを知った。*1

その渡辺三冠を主人公にした漫画である。

この漫画は読んだ覚えがある。その時は単に棋士を描いたギャグ漫画で、当然架空の人物だと思い込んでいた。まさか実在の(しかも現役最強の)棋士だとは思わなかった。

そう、本作は棋士としての渡辺明の苦闘と栄光について描いたものではないのだ。彼の日常生活を描いたほのぼのギャグ漫画なのである。

作者の伊奈めぐみ渡辺明の妻。これが漫画家デビュー作である。というか、作品は本作しか発表していない。本作執筆以前は、渡辺明の著書にイラストを描いたりはしていたらしいが、漫画家になるつもりはなく、そもそも漫画を描いたこともなかったらしい。彼女のブログを見た講談社の編集者から薦められて描くことにしたという。

その割に、コマ割りも話のまとめ方も、最初からうまいと思う。素人くささが感じられない。変に同人誌に関わったりアマチュア活動歴がなかったことが却ってよかったのかも知れない。

追記(2021/4/26)

さすがに4人だけということはなかった。升田幸三大山康晴中原誠は知っていたし、芹沢博文(テレビのクイズ番組でよく見た)、米長邦雄(週刊誌の人生相談のコラムをよく読んだ)も知っていた。特に米長は、その勝負哲学が一時期はいろいろなところで紹介・引用されていた。


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*1:羽生善治は2017年を最後にタイトルから遠ざかっている。2018年は三冠以上がいなくて、渡辺明が二冠、豊島将之も二冠。2019年は渡辺明が三冠、豊島将之も三冠。2020年は渡辺明が三冠、豊島将之が二冠、そして藤井聡太が二冠である。