鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「藤井聡太の将棋入門」

2022年9月22日刊。

1月31日に「羽生善治が膨大な本を書いていて驚いた」と書いたが、藤井聡太も負けず劣らずたくさんの本を書いていて驚くというよりも呆れた。

誰とも知らない人が書くよりも藤井聡太の名を冠した方が売れるであろうことは誰でもわかる。だから話がいくのだろうが、自身が将棋に強いことと、初心者や素人にわかりやすく教えられるかどうかは全く別問題。棋界には藤井聡太よりも教え方のうまい棋士は山ほどいるだろう。藤井も自分の将棋のことだけ考えればいいわけではなく、様々な雑用をこなさなければならないだろうが、「藤井聡太でなければできないこと」と「藤井聡太でなくてもいいこと(むしろ、もっと相応しい人がほかにいること)」はきちんと切り分けるべきだ。

現実に本書の作成にどのくらい関わっているかはわからない。が、「僕のいちばん好きな駒」や「いちばんの上達法」など、随所にコラムが掲載されており、それなりに時間を費やしていることが見て取れる。とてももったいなく感じる。こういう仕事は20年後でもいいのではないかと思うのだ。

内容のよしあしは何ともいえない。わかりやすいのは事実。なお、成りゴマの説明で、竜王と竜馬は元の駒に玉の動きが加わったもの、と説明されている。定番の説明で間違ってはいないが、自分は、故・建部和歌夫八段が述べられた

竜王 = 飛車 + 銀
竜馬 = 角行 + 金

という説明が気に入っている。どの動きが補われるのかがわかりやすいからだ。