紙版・kindleともに2018年10月10日刊行。短編集。「制服ぬすまれた」「ワニ蕎麦」「カラスが鳴くから」「鉄とマヨ」「ハンドスピナーさとる」の5編を所収。
表題作はモーニングに掲載された時にちょっとした衝撃を受け、以来この作者に気を留めるようになった。
公園でコスプレのような派手な服を着て泣いている少女を見かけた大人の女性が話を訊いてみると、プールで泳いでいる間に制服を盗まれたのだという。仕方なく文化祭で使った衣装を借りてきたが、大事(おおごと)にしたくないから学校の先生にも言っていないと。
大人の女性は、実は自分も高校時代に制服を盗まれたことがあった。親にも言えず、川に落ちて汚れたから捨ててきたと言ったらしい。親からはいまだに「制服を買い直したりして大変だった」と言われる。泣き寝入りすると、被害が広がるかも知れないのだ……
というわけで犯人捜しを始める。ミステリーではないが、犯人は割と意外で虚を突かれる。制服を盗られるということが、金銭的な問題以上に当人を長期にわたって傷つける、という部分に主眼を置いた作品だと思う。
最後に女性が会いに行きたいと思う「昔の友だち」というのは誰のことなのだろう?