鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「おおきく振りかぶって」36(新刊)

2022年12月22日刊。35巻が発売されてから一年と5ヵ月。

前巻の他校訪問で刺激を受けた阿部タカヤの発案で、150kmを歩くことに。何日かかけて歩くのかと思ったら、一泊二日なのだそうだ。まあ泊まるところを考えれば一泊とするしかないか……。

一日75kmを時速7kmで歩くという。休憩時間を除いて11時間。知らない道を歩くのだから、道を間違えることもあるし、信号や混雑などで足止めをくらうこともある、そもそも時速7kmを長時間維持すること自体、難しいと思うが、運動部の高校生なら、しかも一人でなければ、このくらいできちゃうのかな。僕が考えて「できそう」と思うレベルでは意味がないのかも知れない。

今回の強歩で一番たいへんな思いをしたのはマネのしのーかだろう。彼女のここまでの献身的な協力あればこそ、荷物も最小限で済んだ。一人の人間のサポートできる範囲を大きく超えていると思うが、しのーか的にはどうなんだろう。

彼らを迎えるレンの実家で、プリンを作ってもいいけど自分が作ったことは内緒にして、というルリがかわいい。そして、ルリが作ったことに気づき、あっさりバラしてしまうレンも。

この一連の行動を花井が報告した時のモモカンの顔と、その顔を見た花井の顔が良かった。ドキッとするよねえ。

とにかく、とても読みごたえがあって面白かった。Amazonのレビューを見ると、野球の試合どころか練習すらないとか、話の進行が遅過ぎるとか、ネガティブな内容が多いが、この人の描く野球の試合はあまり面白くない。むしろこうした地味な練習や部員同士の交流に見どころがあると思うので、その点は問題ない。進行が早く感じるか遅く感じるかは内容による。畳みかけるべきところを引き延ばされるとガッカリするが、必要なところをじっくり描くのは構わないと思う。

とはいえ、レンたちが入部してからまだ一年経っていないのに、もう36巻、連載開始から19年。単純に考えて、彼らの「最後の夏」が終わるまで描くにはあと35年くらいかかることになるが、作者が現在52歳であることを考えると、それはムリ。どうするつもりなんだろう、とは思う。



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